先生、あの話をしてください

柴田邦臣先生と考える -青春をかけて学べる場所づくり-

コロナ禍の教育について考えるインタビュー記事の後編です。前編では「学びの危機プロジェクト(通称:まなキキ)」の活動を紹介しました。今回は、現在とこれからの教育についてお伝えします。お話を伺ったのは、前編に引き続き、国際関係学科教授・柴田邦臣先生です。 
(※この取材は、2021年度に行いました。)

◎「学びの危機プロジェクト(通称:まなキキ)」とは?
新型コロナウイルス感染拡大の状況を受けて、柴田先生の呼びかけにより発足した団体。障害がある子供たちや事情があって学びにくい子供たちの学びについて、さまざまな取り組みをおこなっている。 

前編で活動を取り上げた、まなキキちゃんねるのフライヤー

柴田先生インタビュー記事の前編はこちら
柴田邦臣先生と考える —まなキキとインクルーシブ学習論—


インクルーシブ教育支援室の記事はこちら
前編:インクルーシブ教育支援室と考える 前編 —IESってどんなところ?—
後編:インクルーシブ教育支援室と考える 後編 「まなキキ」に込めた思い


学校へ行く意味

—柴田先生はLearning Crisis、学びの危機について研究していらっしゃいますが、コロナ禍における危機とはどのようなものだと考えますか?

一般的な意見としてコロナ禍での学びの危機は何かと考えた時には、「学校が長期休校になること」と思いがちです。確かに学校に行けないことは危機の1つなのですが、もう少し深く考えてみると、学校に行けないことだけではなくてオンラインで学んでいる現在も危機の中にいると捉えることができると思うのです。なぜかって、生徒や学生が満足できていないからです。じゃあ対面授業に戻したり、オンラインと対面を併用したりすれば危機が解消されるかっていうと、そういうわけでもないんですよ。何が本当の危機かというと、「生徒が大学や各種学校に対して求めているものがバレつつある状態」なんです。

みなさんがなぜ学校に行きたいかっていうと、多くの場合友達と会いたいから、あるいは部活をやりたいからですよね。おそらく勉強だけを考えるのであれば、オンラインという手段があるので、学校に行かなくたってできるわけです。今回は大学を例に話しますが、友達と会う、部活に参加するということは大学の本質的な役割ではないですよね。大学は学ぶ場なのですから。コロナ禍によるオンライン授業を経て、生徒や学生が学校に求めているものは人と会う機会であって、勉強の場ではないということがバレつつあるのです。さらに教える側からしても、生徒・学生が青春をかけて学びたいと思えるものを提供できていないということが露呈したのです。これが、私の考える学びの危機です。今まで、給食の時間や休み時間、サークル活動などで誤魔化されていた学校の「楽しさ」ですが、学ぶ場所としての本質を取り戻した学校に行く、本当の楽しさを気づかせてあげるべきだと思っています。



中身のあるコンテンツの提供

—現在の問題を踏まえて、今後はどのような教育がなされるべきなのでしょうか?

伝えたいことは2つあります。1つ目は、何を学ぶのかということを、伝え、考える努力をすることです。つまり「内容の伴った教育」を提供し、学ぶという関係を取り戻す必要があるということです。内容の伴った教育というのは、指導要領を鵜呑みにせず、なぜ、この単元を勉強する必要があるのか、この単元にはどのような意味があるのかを子供たちがわかるようにするということなのですよ。例えば化学の授業で、イオン化合物とか、電気分解とかについて学ぶ際、それが実生活のどこに活きているか説明ができますか?そのようなことが教科書には書いていないと感じます。「あなたたちの体は有機物でできています」ということも併せて教えた方が、より身近な話題として、子供たちが楽しんで学ぶことができるはずです。

まなキキサイト中の「理科」の記事の1つ。学校で習う単元の原理を、身近なものを用いて学べるように紹介されています。

2つ目は、何か問題が起こった時に制度の問題なのか、内容の問題なのかをわけて考えるということです。私たちはどうしても、制度や枠組みが良ければ中身も良くなると考えがちです。しかしそうではなくて、枠組みと内容は別物なのです。今のコロナ禍に照らして考えてみると、オンラインという枠組みは揃っている。では内容はどうかと考えた時に、やっぱりもう少し詰められると思うのです。学問的に、ないしは科学的に学ばなくてはいけないポイントをきちんと押さえたうえで、ちょっと面白おかしく伝えてあげるのがいいんじゃないでしょうか。まなキキでは、ポイントを押さえた面白いコンテンツ作りを心がけています。編集技術はプロではないので洗練されていないのですが、内容にこだわって制作しているので、ぜひ見てほしいですね。まとめると、今後の教育は「勉強の中身」が大事になってくると思います。

生徒・学生にメッセージ

—最後に、コロナ禍で勉強に励んでいる生徒・学生の皆さんに一言お願いします。

難しいですね……。うまく言えないのですが、やっぱり「学ぶ努力をあきらめないで」と伝えたいです。コロナ禍でオンライン授業が増えて、大学の場合だとレポートが増えるなど、大学に行けない分の対策を講じるわけです。すると、しようと思えばコピペも簡単にできてしまう環境に置かれるのですが、そうなった時にコピペに走ってしまうと、学ぶ意味が曖昧になってしまうと思うのです。デジタル化が進む現代社会で、できることは大幅に増え、さまざまなことが便利になりました。しかし、知識の獲得という観点で見ると、人間が努力して学ぶこと以外に方法はないのです。繰り返しになりますが、みなさんには「努力して学ぶ」ことを続けていただきたいです。そのために「学ぶ意味」を自分で見つけてほしいです。学校で何を学びたいのか、なぜこの勉強をしているのか。私たち教員も、学びの場としての空間が学校であるべきだと考えていますし、青春をかけてみなさんが学べるような学校を作りたいと思っています。


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柴田先生へのインタビューという形をとり、前後編でまなキキの活動と教育に対する思いを伺ってきました。まなキキの活動に興味のある方は、ぜひサイトも訪ねてみて下さい。

まなキキ公式サイトはこちら:まなキキ公式サイト

Learning Crisisについて詳しく知りたい人はこちら
まなキキちゃんねる「Learning Crisisとは何か」(動画)