わたしのまなびアイテム

まなびアイテム #1 - ネーム入り計算用紙

学部生のときは勉強が中心なので、本や論文を読むのにノートを作って勉強した。ノートは当然ながら自分で買った。B5 版の罫線の細かいものを使っていたような気がする。理由はよく覚えていないが、持ち運びの便と節約を考えてそうなったのかもしれない。大学院に入ると、文房具が支給されるようになり大学の中で一人前に扱ってもらえるようになった気がしてうれしかった。特に、A4 サイズのノートと計算用紙、ボールペンが有り難かった。大学院でも論文や本を読むとき、あるいは研究結果をきちんとまとめる時はノートを使った。後で詳細を思い出すのにはその方が便利だからだ。しかし、研究セミナーや、自分の計算には計算用紙を使った。また常に持ち歩いて、喫茶店で計算したり、人と議論するときに使った。セミナーでは黒板でやった計算を写し取って黒板を消し次の計算に進むという具合であったが、途中の計算に間違いが見つかったり、行き詰まったりして次回持ち越しということもしばしばあった。後で自分で計算をやりなおすとき、計算用紙ならノートをとった部分を剥ぎ取り、黒板での計算を検討しつつやり直せるので便利である。また、計算用紙には、数式、絵、アイディアなど何でも思うがままに書くことが出来る。失敗したら破いて捨てればよいのである。ノートだと記録に残ることがプレッシャーになりそうはいかない。


その頃は計算用紙の一束(100 枚綴り)を、なくなるごとに事務室に行って名前を記帳してもらってきた。あるとき私の指導教員が事務室から出てくるのに遭遇した。彼はノート数冊と計算用紙10 束ぐらいをかかえて出てきた。非常に強烈な印象を受けたことを覚えている。その先生からは、これこれの理論(有名な大理論である)を発見するときは数か月で計算用紙1000 枚から2000 枚ぐらい計算したという話を伺った。そして君たちはまだまだ計算が足りないと言ってしかられた。

パソコンが研究道具の一つとなった現在でも、計算用紙は私の研究と、講義、講演の準備には欠かせないものである。大学名入りの計算用紙は気に入っている。私にとっては、ネームが入った計算用紙があるということはその大学が研究にも目を向けているという証拠のようなものである。私がこう思うぐらいだから大学院生にとってはなおさらそんな感じは強いだろうと思う。