梅いち凛 ~咲いた津田塾生~
大学で過ごした時間の価値 - 遠藤 有理さん
『梅いち凛 〜咲いた津田塾生』は、現役学生にスポットを当てたロングインタビュー連載です。plum garden編集部員が、憧れの先輩や何かを成し遂げたクラスメイトに話を聞きに行きます。(郷路拓也 / plum garden顧問)
そこかしこに春の兆しが覗くこのごろ、津田塾大学ではこれから社会へと踏み出す学生たちが、大学生活の締めくくりを迎えます。
学生の中にはこの1年間、学びの集大成として卒業論文や卒業制作に取り組んだ人がいます。今回取材した遠藤さんもその一人です。私は1月のキャンパスレポートで、メディアスタディーズ・コースの卒業論文発表会を取材しました。その会で遠藤さんは、現代の若者にスポットライトを当てた論文について、巧みなプレゼンテーションを行っていました。 ぜひ遠藤さんにお話を伺いたい—シリーズ「梅いち凛~咲いた津田塾生」 第2回は、メディアスタディーズ・コース賞受賞という大きな花を咲かせた、英文学科4年の遠藤有理さんにインタビューします。
「最近のマスメディアの報道に、現代の若者を批判するかのような物言いがされているということを感じていました。例えば、ブランド物や自動車に興味を無くしているというトピックを取り上げるときです。私は、メディアは何をわかってそう言っているのだろう、本当にそのようなことが起きているのだろうかと疑問を抱き、社会学の観点から若者のモノ消費離れについて考えるようになりました。」
「論文制作当初は『時間の価値変化』のみを論点にしていました。時間を短縮するために何かを買ったり、家事代行サービスを活用することは、自分の時間を作るためにお金を出すことです。つまり、それだけ時間の価値が重くなったということです。しかし、それだけにフォーカスして卒業論文にするには、今一つ何かが足りないとゼミの担当教員である萱野稔人先生に指摘されました。そこで、時間の価値変化はどのような社会現象を生み出しているのか、何に影響を与えたのかということを考えたら、もともと頭の片隅にあった『若者のモノ消費離れ』と結びついたのです。」
-遠藤さんは論文の中で、昔の若者はモノを消費することで「自分らしさ」を表現していたと言います。そしてモノがあふれ、メディアも発達した現代では、モ ノを持つことで得られる「自分らしさ」が薄れ、モノを消費しなくてもSNSで自分を表現できるようになったと指摘します。
イギリス留学をきっかけに
「2年生の3月に、尊敬している先輩が留学から帰ってきて、そのときに『迷っているなら絶対に行った方がいい』と言ってくださったのが一番大きな後押しになりました。ずっと留学に行きたいとは思っていたのですが、いざとなると踏ん切りがつかなかったのです。しかしその先輩が留学ですごく成長できたと言っており、『行くなら今だよ』と言葉をかけられて、決断しました。それから猛ダッシュで準備をして、必死で情報収集して、勉強して、3年生の9月から留学することができました。留学中も頑張りましたが、準備も頑張りましたね。」
メディアスタディーズ・コースでの学び
「所属する萱野先生のゼミでは3年生のときに研究の成果をまとめた冊子を作ります。私たちはビッグデータを大きなテーマにして、グループごとにさまざまな観点から研究しました。研究では、その活用方法について、ビッグデータを扱っている色々な企業に電話やメールでアポをとって取材に行きました。とても貴重で面白い経験でした。」
「講義で聴いただけのことよりも、自分で勉強をしていく過程で培われた考え方が、今後に活かせるものになったと思っています。現象をうわべだけで捉えるのではなく、なぜそれが起きているのか、この現象を変えるためにはどうすればいいのか、などという本質を掴もうとする考え方は広告のみならず、どこにいっても使えるスキルだと思っています。そういった核になるものにフォーカスできるようになったのは、取材をしたりものを書いたりした経験が生きていますね。また私が卒業論文で取り上げた、『時間の価値が変わったことで、モノを消費する時の見極め方やモノに対する価値観も変化した』というポイントは、広告を考える土台になると思います。」
自分の軸を持った生き方を
「先ほどの留学の話でイギリス人の時間のルーズさに触れましたが、逆に言うと日本はとても時間に厳格ということ。とても急ぎ過ぎているという気がします。こういう日本の風潮に流されていくしかないのかな、と思う気持ちもありますが、『こんなに時間に厳格である必要があるのかしら』と考えることもあります。そういう気持ちもあるからか『仕事だけに生きたい』とは思っていないです。仕事だけを生きがいにする生き方もありますが、私は友人や大切な人と過ごしたり、美味しいものを食べたり、旅をしたり…そういった人生の幸せや楽しみのための『手段』として、仕事をしたいと考えています。特に私の進む広告業界は非常に忙しいと言われているので、しっかりと自分の軸を持って楽しんで仕事をしていきたいと思っています。」