津田塾探訪

津田塾探訪 #8 - 今明かされる!「あの家」の正体とは?

緑豊かな津田塾大学小平キャンパス。四方を鬱蒼と生い茂った樹々に囲まれ、「森のよう」と称されることもしばしば。そんな樹々の中、キャンパスのはずれでひっそりと佇む一軒家があります。瓦屋根に黄色い外壁-一見普通の古風な日本家屋のようですが、どこかモダンで可愛らしい。その洒落た雰囲気から、人目につきにくい場所であるにもかかわらず十分な存在感を放っています。

一体何のためにあるの?誰か住んでいるの?今回は本学の学生なら一度は気になるであろう「あの家」の謎を調査。その意外な使われ方と驚きの内部、そして歴史に迫ります。


「あの家」とは?

キャンパスの南東、5号館と2号館の間に建つ「あの家」。樹々に囲まれ、あたりは静寂に包まれています。授業等には使われていないため、本校の関係者も近くを通る程度でほとんど馴染みがありません。しかし、ここも立派な大学施設。その正式名称を「3号館」といいます。ではこの3号館、一体どのような施設なのでしょう。

実はこちら、客員教員・招聘教員のゲストハウスなのです。主に海外からの講師の方が利用され、大変高い人気を誇っています。ときには半年間予約でいっぱいのこともあるのだそう。それほどまでにゲストを魅了する秘密、一体どこにあるのでしょうか。いよいよその内部に入ってみましょう。


いざ、潜入!

樹木に覆われ、その全体像はなかなか見ることができない3号館。しかし、実際に近づいてみるとその姿は意外と大きく、2階建てとは思えないほどの迫力です。宿泊スペースは大きく1階と2階に分かれており、それぞれ異なる玄関口があります。シングルの部屋2つを有する1階は洋間、ツインの部屋を有する2階は和室となっており、それぞれ見所です。詳しく見ていきましょう。

まずは1階の洋間へ。足を踏み入れた瞬間、思わず息をのんでしまうのはその内装。古風な日本家屋という印象の外観からは想像できない、レトロで高級感のある空間が広がります。その雰囲気は、まるで明治時代の洋館にタイムスリップしたかのよう。ランプひとつとっても、そこには現代の建物にはない、時代を感じさせる美しさがあります。他にも、大きな窓から差し込む光、細部までこだわった家具がこの部屋の美しさを一層引き立て、ゲストをもてなします。

高級感あふれるダイニング。

ゆっくりと読書をするのにぴったり。

大きな窓から降り注ぐ光。

季節に合わせて食器を入れ替えています。

暖炉。現在は使われておりません。

アンティークなランプ。

この他にも、1階にはシングルの寝室が2つと、キッチン、バス・トイレが備わっており、快適に滞在することができます。

キッチン。必要な家電はほとんど揃っています。

シングルの部屋。書斎としても使えます。

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次は2階へ行ってみましょう。1階とはうってかわり、こちらの魅力は日本らしさを存分に出した「和室」。2面いっぱいに広がる障子とそこから見える緑の景色にホッと一息つきたくなります。畳に座卓というシンプルな空間で、まるで旅館のような雰囲気。ゲストも静かで落ち着いた時間を過ごせることでしょう。

旅館のような雰囲気。

静かな時間を過ごせます。

 

2階にも、1階同様キッチンやバス・トイレが付いているほか、ツインの寝室もあります。大きな窓や暖炉が印象的で、優雅で落ち着きのある空間です。

ツインの部屋。暖炉もあります。




3号館の歴史

旧学長舎(津田塾大学デジタルアーカイブより)

ではこの3号館、一体いつからあるのでしょう。実はこちら、一度改修が行われています。かつては教師館の一つで、津田塾大学初代学長(女子英学塾2代塾長)星野あい学長邸でした。関東大震災後、校舎が小平の地にやってきた1932年当初、3号館周辺には第1〜5教師館が存在しており、津田塾大学で教鞭を執る教員たちが利用していました。

かつての玄関付近の様子(津田塾大学デジタルアーカイブより)

その後、1952年に星野学長が退去され、教職員等の利用を経て、2000年に津田塾大学創立100周年記念事業の一環として改修が行われました。旧学長邸としてできるだけ当時のままの姿を保存することとし、客員教員のゲストハウスとしても活用されるように改修されたのです。この改修にあたり、耐震工事はもちろんのこと、キッチンやバス・トイレ、寝室なども宿泊施設仕様へと様変わり。また、もともとあった女中部屋や物置も、この改修を経て他の部屋の一部へとリニューアルされました。ただし、外観は既存のイメージを壊さないよう考慮した補修がなされています。外壁の1階部分の杉皮張りや建物全体を覆う黄色の漆喰、そして瓦屋根など、建設当時の仕様を保った姿が実現しました。

旧学長舎(津田塾大学デジタルアーカイブより)

現在の3号館

1階部分の外壁。かつてと同じ杉皮張りを採用。

時の流れを感じる照明。

創立100周年を記念して生まれ変わった3号館。しかしその姿は、今もなお星野元学長の住まいの面影を伝えています。



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「あの家」がゲストハウスとして使われているという、意外な事実。今回初めて明らかになった内部も、外観からは想像できない造りで驚きました。改修が行われたとはいえ、旧学長邸であった頃の姿は今も随所に残っています。これからもゲストハウスとして多くの客人をもてなし、その人気が長きにわたって続く場所であることを願います。

<参考文献>
   津田塾大学一〇〇年史編纂委員会編『津田塾大学一〇〇年史』(津田塾大学、2003年)
   津田塾大学一〇〇年史編纂委員会編『津田塾大学一〇〇年史 資料編』(津田塾大学、2003年)
   星野あい著『小伝』(中央公論事業出版(製作)、1960年)

<写真出典>  
   津田塾大学デジタルアーカイブ http://lib.tsuda.ac.jp/DigitalArchive/

<協力>  
   津田塾大学 管理課
   津田塾大学 星野あい記念図書館 津田梅子資料室

※今回は特別に津田塾大学管理課の許可を得て、職員の立会いのもと撮影取材を行いました。普段は立ち入ることができませんのでご了承ください。また、3号館はあくまで招聘教員のゲストハウスであり、学生の利用はお断りしています。