梅いち凛 ~咲いた津田塾生~
「なぜ」を考え、「心」に従う - 大塚杏里さん
リケジョ(理系女子)から国際協力の道へ
「親には『ああ言えばこう言う子どもだった』と言われます。保育園の先生に『みんなと外で遊びましょう』と言われても、『なぜ外に出なくてはいけないのか』納得のいく説明を得られないと動かないほど頑固だったそうです。正義感が強く、自分が『これはダメだ』と思うことはどうしても言わずにはいられない性格でした。(笑)」
「二つ目の衝撃的な出来事は、高校1年のときに受けた地理の授業で『格差問題』について知ったことです。私は昔から様々なことを比較的そつなくこなすタイプで、何事も自分の努力次第で変えられて、結果は後から付いてくるものだと思っていました。この世界は平等であり、良い生活をしたいなら努力をすれば良いと思っていたんですね。」
あきらめたら何も変わらない
—理系から文系へ。大学の選択にあたって、周囲の人からの反対の声もあったと言います。それでも自分が学びたいことは何かを第一に考え、津田塾大学への入学を決めました。多文化・国際協力コースを選択し、国際協力について学び始めたものの、世界の問題を知れば知るほどその複雑さと根深さを思い知らされます。自分の無知と無力さへの絶望感から一度は国際協力の分野から離れようとしたと言います。しかし彼女は、「あきらめたら何も変わらない。絶望しながらもどうにかあがいていくしかない。」と思い直し、自ら行動を起こすことを選択しました。
「そこで、人の心を変えることができるような活動をしたいと思いました。学生であるからこそ挑戦しがいのある、国際協力の一つの『切り口』であると考えたんです。その方法を考えたときに、自分がコンプレックスを乗り越えた経験を思い出しました。小学生のときからニキビがひどく、人の顔を見て話すことが苦痛で性格も暗かったのですが、高校生のときメイクに出会ったことで、内面に変化が現れ、顔を上げて外に出られるようになったんです。この経験から、気持ちを自力で変化させることは難しくても、外見を変えると自動的に内面の変化につながることに気づきました。美容の力で多くの人の心を変えられるのではないかと思い、美容と国際協力が結びついたんです。」
批判に押しつぶされそうになりながら
「『Bela Virino』の活動で最も大きなイベントである、『ミス・ドリーム・コンテスト』は、単に外見を評価するものではありません。外見の変化に伴って、自信を持ったり前向きになったりというような、『心』の変化を実感できる場をつくりたいという思いが込められており、出場者にはステージ上で自分の夢について語ってもらいます。そのため、一般的な『ミスコン』と異なることを強調するために、『ドリコン』と略します。」
「なぜ」という問いを大切に
—最近は就職活動を控えた友人との間で、将来についてのことを話す機会が増えたそうです。そんな中で、大塚さん自身が考える「生き方」について語っていただきました。
「そう言うと、いかにも私が将来を深く考えて緻密な人生設計をしているように聞こえてしまうかもしれませんが、むしろその逆で、『自分の興味や直感に従って生きる』ということを提案します。子供の頃はみんな、難しいことは考えずただ純粋に自分の好きなことをしていたと思うんです。しかし、大人になっていくに連れて、世の中の常識や他人からの評価、地位や名誉など様々なことが気になって、自分の本当の気持ちが見えなくなってきます。」
「だから私は、常識や自分自身への疑いの気持ちを常に持ち、『なぜ』を問い続けることで、自分の心にもやをかける偏見をできるだけ取り除こうとしています。『なぜ』と追究する問いによって、過去の体験や親の価値観、生まれ育った環境や時代の空気感などといった、『今現在の自分の思考を形成するもの』が何であるのかを理解することができます。この作業の繰り返しによって初めて、私たちの思考は自由になり、『知』に覆われて見えなくなっていた、本当の『心』の声を聞くことができるのだと思います。」
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編集後記
2時間に及ぶロングインタビューにもかかわらず、終始真剣な眼差しで生き生きと語ってくれた大塚さん。大塚さんとは1年次に同じゼミに所属していたのですが、じっくりと話してみると、改めて彼女の魅力に引き寄せられました。私自身も、ついつい疎かにしてしまう「なぜ」という問いを繰り返し、自分の「心」と向き合えるようになりたいと思いました。今回のインタビューを通して、選択をすること、働くということ、そして生きていくということについて、深く考える機会を与えてくれた友人がいることに、つくづく幸せを感じたのでした。