キャンパスレポート
キャンパスレポート #50-2020年11・12月
2020年は皆様にとってどんな一年になったでしょうか。変化がとても激しく、悲しい出来事もあったかもしれません。今回のキャンパスレポートでは、そんな激動の時代でも変わらずに美しいキャンパスの自然と、新しい形式の授業や外国語チャットルームの様子をお届けします。
季節の巡り
紅葉
11月になると木々が色づき、キャンパスは緋や橙に染まりました。陽の光を浴びて、鮮やかに輝きます。
クリスマスツリー
12月の小平キャンパスでは、ハーツホン・ホール*前のヒマラヤ杉にイルミネーションが設置されました。
今年は学生の姿がほとんど見られない、しんとしたキャンパス。冬の夜はいっそう寂しさと寒さを感じてしまいますが、優しく灯るイルミネーションが心を温めてくれました。
*ハーツホン・ホール:小平キャンパスの本館のこと。
ハイブリッド授業
第3ターム以降の授業も基本的にはオンラインで行いつつ、セミナー等の一部の少人数授業では、対面とオンラインを融合した「授業レベルハイブリッド**」方式が採られました。
「学生の反応や空気感が伝わってきて嬉しい」とおっしゃる先生や、「初めてキャンパスに来て先生や友達に会うことができて、やっと大学生になった気分」と語る一年生の声が印象的でした。オンライン授業が始まって半年以上が経ち、少しずつ慣れてくるとともに、オンラインならではのよさを感じている人も多いと思います。それでもやはり、対面でこそ得られる学びがあることにも気づかされました。安心できない日々が続きますが、少しでも早く状況が改善し、キャンパスに賑わいが戻ってきますように。
**授業レベルハイブリッド:その授業に参加する学生全員の了承を前提とし、同じ授業時間に対面とオンラインでの出席者が混在する形で行われる授業です。
2020年度の外国語チャットルーム
津田塾大学には、第二外国語のチャットルームがあります。これは、各言語のネイティブスピーカーをチャットリーダーとし、その言語を使って自由に会話をするものです。授業ではないので、気軽に参加し楽しむことができます。
第3・4タームもオンラインでの授業になることが決定した今年度は、チャットルームもオンラインで開催されました。皆さんの中には、「チャットルームに興味はあるけど実際どんな様子なのかわからない」「第二外国語で話せるか不安だからなかなか参加できない」と感じている人もいるかもしれません。実は、私もいつか行ってみようと思ってはいたものの、今日まで参加できずにいました。
そこで今回は、チャットルームの実際の様子や魅力を知るために、外国語委員会を代表して、フランス語チャットルームのコーディネーターを担当されている、国際関係学科教授の北見秀司先生にお話を伺いました。また、実際に今学期開催された4言語のチャットルームを見学させていただき、各言語のチャットルームを担当された先生方や、参加していた学生から、オンラインチャットルームがどのようなものだったか、お話を伺いました。
北見先生インタビュー
フランス語チャットルームのこれまで
チャットルームがどのようにスタートしたかは、言語によって異なります。フランス語チャットルームはどのようにスタートしたのでしょうか。
北見先生:フランス語チャットルームは、初めの頃(2016年〜2018年)は、フランス大使館の方を経由して、他大学の留学生にチャットリーダーをお願いしていたんです。そのあとは、セルジ・ポントワーズ大学(現在はCYセルジ・パリ大学)と津田塾大学の協定留学の制度ができたので、留学生に頼むようになりました。今年度は新型コロナウイルスの影響で留学生が来られなくなってしまったので、第3タームから、フランス語の授業を担当されているブランシャール先生に、チャットリーダーをお願いしています。
「フランスがやってきた」
2019年度第3・4タームのフランス語のチャットリーダーは、二人の留学生が担当していました。彼女たちは、日本に旅行した経験があるフランス人コメディアンの「日本のこんなところに驚いた」といった内容の動画を使い、学生たちに意見を聞きながら、重要な表現を教えていたそうです。当時のことを北見先生は「すごく面白かった」と振り返ります。
北見先生:(チャットリーダーを)二人にしたことで、雰囲気が変わりましたね。一人だと、やっぱり日本の雰囲気に合わせてしまうところがあったのですが、二人だと、なんだかフランスがやってきたようで。フランス人ってこんな感じだよな、フランス人同士の会話ってこういうノリだよな、というのが再現されるんですよね。それこそ国内留学のようでしたね。ああいう機会ってよいなと思います。
国内留学のようだ、とお話しされていたとおり、チャットルームの中では言語だけではなく、文化的な学びを得ることも多いようですね。
北見先生:(日本に来て驚いたというエピソードの中で)日本人は礼儀正しくて丁重な民族というイメージがあるみたいなんです。日本ではデパートにお客さんが入って行く時、お店の人はすごく丁重に「いらっしゃいませ」と挨拶するわけですよね。でもそれに対してお客さんは何も言わない。(チャットリーダーが言うには)フランスでは、お店の人は日本ほど『いらっしゃいませ』とかは言わない。でもお店の人がそう言ったら、話しかけられた人はお客さんであっても絶対に『ボンジュール』と答えなければならない。答えないと、すごく失礼な人だな、と思われる。礼儀正しい人たちであるはずの日本人なんだけど、お店に入って行った時に、お店の人がお辞儀しているのにこっちはお辞儀しないとか、あれはびっくりした、と言っていましたね。我々は言われてみて「なるほど」と思うことがあって。そういうのは面白かったですね。やっぱり、言葉を学ぶというのはすごく大事なんだけど、違う生き方があるんだな、違う生き方があって違う文化があるんだなということを感じてほしいですね。私たちは知らぬ間に、ある型にはまったものの見方・生き方を身につけてしまっていて、こうでなければ生きていけないという思い込みがある。が、全く違う生き方に出会い、それで十分生きていけていることを実感することで、いつの間にか刷り込まれていた今までの見方から解放されていく。『あ、これでもやっていけるんだな』、この気づきがとても重要だと思います。かけがえのない体験だと言っても大袈裟でない。
基本的に、チャットルームの内容はチャットリーダーにお任せしているそうです。そのため、チャットリーダーによっても言語によっても、チャットルームの雰囲気はそれぞれ異なります。そんな中で、北見先生が一つだけフランス語のチャットリーダーにお願いしていることがあるそうですが・・。
北見先生:(チャットリーダーによって)授業のようにやる人と、もうちょっとくだけてやる人といますね。ただ、シーンとなっちゃったら困るから、私たちがあらかじめチャットリーダーの方に言っていることがあります。それは、自由にやっていいんだけど、シーンとなっちゃった時になにか対応できるように『今日はこういう話題でやろう』というのを、漠然と考えておいてほしいということです。私たちの期待を上回るほど周到に準備をしてくれています。
「自分が学生だったら、毎週絶対通う」
英語以外の外国語は、授業以外で使う機会がほとんどありません。北見先生ご自身も、学生時代にそのことを痛感していたようです。そのため、第二外国語のチャットルームの制度がある津田の学生はすごく恵まれていると思われたそうですね。
北見先生:あの頃に比べて日本にいるフランス人は増えていますが、それでも話す機会は全然ないです。チャットルームは無料で利用できるし、人数も多すぎず、大体3人くらい。だからすごくよい機会だと思う。自分が学生だったら毎週絶対通うなって思いますね。授業だと、間違えて喋ると減点になるかな、とためらってしまうかもしれませんが、チャットルームは授業じゃないからそういう不安感がない。外国語を話せるようになるには、最初は間違えても、とにかくいっぱい喋るのが大事で、喋ってみて直されて、だんだん上手くなって、という経験がないとダメですから。チャットルームは構えずにできるから、そういうところがよいのかなと思います。オススメですね。参加するまではハードルが高いと思う人が多いんですけど、授業じゃないので、途中から入ったり、途中で抜けたりしても大丈夫ですよ。だから、遠慮なく参加してください。人数が少ないから、今までこういう話をしていましたよと教えてくれるし、置いてきぼりにされることはまずないですね。
ただ会話の練習をする場、というわけではない外国語チャットルーム。「まだ話せるほど実力がない」と感じていても、その場に参加するだけで言語や文化に触れられたり、他の学習者から良い影響を受けられたりと、楽しむことができそうだと感じました。そもそも授業ではないので、今の自分の実力を気にする必要はないのですね。外国語チャットルームがどのようなものか掴めたところで、今年度のチャットルームはどのようなものだったのか見てみましょう。
今年度のオンラインチャットルーム
今年度の第3・4タームのチャットルームは、スペイン語、フランス語、ロシア語、ドイツ語の4言語で、ZoomやGoogle Meetを使用し、オンラインで開催されました。各チャットルーム一回(一時間ほど)につき、先着8人まで参加できます。希望者は、毎週月曜日に学芸学部事務室(外国語)から配信されるメールにて予約をし、参加日までに送られるURLからチャットルームに参加します。対面からオンラインに形式は変更したものの、予約した方の入退出自由、お昼を食べながらの参加可など、基本的なルールは対面時と変わりません。授業は取っていないけれど、独学で学んでいる、または興味のある言語のチャットルームに参加することも可能です。
スペイン語チャットルーム
今年度チャットリーダーを担当されていたのは、クリスティーナ・センサノ先生。丁寧さと相手に対するリスペクトを忘れずに、友達のように話せるよう、話しやすさを意識してチャットリーダーを担当されているとのこと。初めて参加する学生がいるときは、自己紹介などがメインになりますが、基本的に、旅行や学校の話など、学生と自然におしゃべりすることが多かったそうです。私が見学させていただいた日は、丁度、国際関係学科の学生の卒論提出の時期だったので、参加した学生の卒論についてお話しされていました。参加していた学生たちは、もう何度もチャットルームに参加しているとのことで、日本語をほとんど使わず、スペイン語だけで会話が盛り上がっていました。
フランス語チャットルーム
担当されていたのは、ニコラ・ブランシャール先生。見学させていただいた日は、実際のフランスでのニュースを使い「アクセントに対する差別」を話題に重要な表現を学んでいました。「今回のこの話題は少し難しかったかもしれない。普段はもう少し簡単な内容です。学生に負担をかけたくないので、日常生活に対する質問など、予習の必要がない内容を扱うようにしています」とおっしゃっていました。第二外国語を使ってニュースを扱うことで、その言語を使っている実感が湧きそうだと感じました。Zoomの画面共有機能を使って、文法の説明をされていたので、聞き取れない単語があっても確認しやすそうです。
ロシア語チャットルーム
今年度担当されていたのは、以前からロシア語チャットルームを担当されているオリガ・タラリキナ先生。私自身も第二外国語としてロシア語を履修しているので、今回は見学ではなく実際に参加しました。授業でわからなかったところを質問したり、画面共有機能を使い文法問題を参加者みんなで解いたり、という内容でした。普段は、まずその日に扱う文法問題を解き、次にその文法を使いながら文を作ったり会話をしたりします。このように、だんだん自分でもその文法を使う割合を増やしていく、という流れで、チャットルームを開催しているそうです。希望者はその日の文法問題のファイルを後ほど送ってもらえるので、チャットルームで学んだことの復習もできます。忘れかけていた文法事項を復習できるので、授業と合わせてより知識が定着しそうです。参加していた学生も、補助授業として活用している、と話していました。
ドイツ語チャットルーム
担当されていたのはアネッテ・リープハルト先生。初めは観光など、ドイツに関する内容を扱っていましたが、基本的に学生の興味に合わせて、その日のチャットルームの話題を決めているとのことでした。参加している学生の多くがドイツへの留学を考えているようで、そのための準備としてチャットルームに参加していたようです。他の参加者がドイツ語で会話をしている様子を見ることで、自分のレベルを知ったり、学習のモチベーションを上げようとしている学生もいました。
チャットルームに参加していた学生の参加理由の中で最も多かったのは、「ネイティブの方とお話しする機会を得たい」というものでした。その学生達に、オンラインチャットルームは昨年度までの対面形式のチャットルームと比べてどうだったのか伺いました。
その結果、話す相手が目の前にいないこと、飛び入り参加は難しいことなどの不便さはあるものの、それ以外の点で不便に感じる点はなかった、という声が多く聞かれました。さらに「オンライン形式なら自宅から参加できるため以前より参加しやすくなった」、「画面共有機能があるため綴りなどがわかりやすく便利」など、オンライン形式だからこその利点がある、という感想も多くありました。オンラインと対面、それぞれの好みがわかれるところもありますが、その言語を実際に使える場としてのチャットルームの役割は変わりません。何度もチャットルームに参加しているという学生達が、自信をもって第二外国語で会話している様子が印象的でした。取材をする中で、私ももっと前からチャットルームを活用していればよかった、と強く思いました。今年度のチャットルームは終了してしまいましたが、また次にチャットルームが開催された時には、今まで参加したことのなかった方も、顔を出してみてはいかがでしょうか。
(この記事は学芸学部事務室(外国語)の皆様にご協力いただき作成しました。ご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。)
ここまでお読みいただきありがとうございました。
授業やチャットルームもそうですが、さまざまなことがオンライン化せざるを得なかった2020年。しかしいつもと違う形式になったことで、「そもそもこの制度ってどうして始まったんだろう・オンライン化する前はどんな活動だったのか」と考え直すことも多かったのではないでしょうか。新たな魅力に気づくことや、興味を、もつ機会が多くあった年と言えるかもしれません。
11月・12月のキャンパスレポートはこれで終わりです。次回のキャンパスレポートもお楽しみに。
(イラスト・英語英文学科4年 寺田梨衣子さん)