先生、あの話をしてください
自分なりの生き方を支える、さくらんぼ保育所
『先生、あの話をして下さい』は、学生編集部員によるインタビュー記事です。大学の授業中や普段の雑談で、教員が何気なくしていた話は、ときどき学生の心に深く残ることがあります。この連載記事では、そんな風に心に残っている「あの話」を、編集部員がもう一度先生に聞きに行きます。(郷路拓也 / plum garden顧問)
私がさくらんぼ保育所を知ったのは、柴田先生が昨年度の授業中にされていたお話がきっかけです。この授業のことが強く印象に残っていた私は、改めて詳しいお話を伺いに、先生の研究室を訪ねました。
さくらんぼ保育所とは
—先生が、さくらんぼ保育所に関わるようになったきっかけを教えてください。
「私が津田塾大学に着任したのは、実はさくらんぼ保育所が理由のひとつでもあったんです。自分の子どもを預けられるところを探していたのですが、大学でちゃんと保育所を持っているところはあまり多くありません。その点本学はとても恵まれていると思います。学生や教職員の子どもが芝生でころがったり、松ぼっくりを拾って遊んだりしている大学って、それほどたくさんないのではないかと(笑)。自分の勤務中に何かトラブルがあっても、すぐに子どものところに行けるということも魅力的ですね。」
—さくらんぼ保育所は、どういう保育所なのですか。
「30年以上の歴史がある保育所です。現在の教職員の中に、自分が子どもの時にさくらんぼ保育所に通っていたという、生き字引のような方もいらっしゃいます(笑)。もともとは保育所を求める職員、教員、そして学生の声から生まれたものであり、他から与えられたものではないので、自分たちでやっていこうという雰囲気が今も残っています。」
「小規模な保育所とはいえ、大学の大きな行事に参加できることも特徴の一つですね。学内に保育所があることは、大学にとっても、子育て中の人が身近にいて意見を取り入れられる、という良い面があるんです。だから大学にも保育所にもメリットがあり、保育所自体の特色もあって、かつその特色を生かすものになっていると思いますね。」
多様になった女性の生き方
保育所の重要性
「実は保育所って、私たちにとっての『自由』というものを支えているんですよね。子どもの世話をしながら勉強することは、とても難しいんです。集中して自由に使える時間はなかなか作れません。自由と言っても、ただ単に子どもを放任して自由ということではありません。そこで勉強してキャリアアップすることによって、家庭状況が良くなったり、子どもに高い教育を受けさせることが出来るようになったりと、子どもの自由も増やすわけです。保育所は、子どもと親と両方とも支えるという意味で、とても重要です。」
—正直なところ、そのように重要な役割をしている保育所が本学にあるということを、知っている在学生は少ないと感じます。
「さくらんぼ保育所について知らずに卒業していくのは、もったいないと思います。現状では女性はどうしても、これから自分自身のことも含めていくつも選択する場面が出てきますよね。その中で、子どもをどうするかということを、自分で決断する瞬間がいずれ訪れるわけです。その時に、自分が卒業した大学に保育所があって、大学に戻ってくれば利用できるということを知っているかいないかの違いって、相当大きいと思うんですよね。」
自分なりに生きる、ということ
さくらんぼ保育所の歩み
・1979年、国際関係学研究科の大学院生が「大学内に子どもを預けるスペースがあれば、勉強や研究ができる」と発言したことををきっかけに保育所が誕生。当初は大学院生が子どもを交互に面倒を見て、授業を受けられるようにするということで開始。
・1980年、教職員も加わり、保護者たちが自主運営を行う「さくらんぼ共同保育所」を常設。
・2011年からは大学が設置運営主体の「さくらんぼ保育所」となる。
運営は利用者の保育費、教職員からの寄付、大学からの援助金で成り立っているが、資金面で厳しい面もある。しかし、「社会で活躍する女性を育てる」という津田塾大学の理念、「出産で休学・休職した学生、教職員が安心して学校に戻ってこられるように」という保育所の理念のもとに開所し続けている。