Tsuda Tsuda C ~津田塾生のホ・ン・ネ~

TTC #3 - 小平さんぽ ~玉川上水編~

都会の喧騒から離れ、のんびりとした雰囲気が漂う津田塾大学。美しく咲き誇る花々が、5月の小平キャンパスをカラフルに彩ります。そんな小平キャンパスに負けないくらい自然豊かな風景が、隣にも広がっています。それが、通学路の傍らを流れる津田塾生にとってなじみ深い川、玉川上水です。羽村から四谷大木戸まで全長43kmにも及び、川沿いに植えられた木々が緑のトンネルを作り出しています。しかし、多くの津田塾生が川に沿って歩くのは、せいぜい数十メートルほど。全長が43kmもある玉川上水の、ほんの一部にすぎません。この川沿いの道には、いったい何があるのでしょうか。気になった私たちはカメラを手に、小平キャンパスから東大和方面に向かって散策してみました。
 

玉川上水の歴史

散策に出かける前に、まずは玉川上水の歴史を調べました。そもそも「上水」とは、飲用として溝や管などを通して供給される澄んだきれいな水のこと。そして玉川上水は、そのきれいな水を供給するための施設、つまり上水道です。
玉川上水が造られたのは1653年のことです。徳川家光の時代に、江戸の人口が増え、従来の水道だけでは飲み水が足りなくなるという事態が起こりました。そこで1652年、江戸幕府は、多摩川の水を江戸に引き入れるという壮大な計画を立てました。その工事を請け負ったのが、玉川庄右衛門と清右衛門の兄弟でした。1653年の4月に工事が始まり、玉川兄弟は、羽村に川の水の取り入れ口を造って多摩川の水を引き、四谷大木戸まで約43kmの上水路を完成させました。工事期間はわずか8ヶ月間。玉川上水は当時、世界一の規模を誇る水道でした。
完成から約350年経った2003年8月には、江戸、東京の発展を支えた歴史的価値を有する土木施設・遺構として、国の史跡に指定されました
 

玉川上水沿いに設置された看板。

新緑の世界へ

 

川沿いの道をトコトコ歩いていきます。

5月某日、実際に川沿いの道を歩いてみることにしました。初夏を感じさせる爽やかな陽気の中、鳥の歌声に聞き入りながら遊歩道に足を踏み入れます。アスファルトで舗装されていない地面から、やわらかな土の感触が足に伝わります。ふと見上げれば、川の両側に沿って植えられた木々から、木漏れ日が優しく降り注いでいました。川沿いのしっとり潤った空気が心地よく、自然と足が進みます。すれちがう方々も、林の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、楽しそうな表情で歩いていました。木陰の涼しい小道は、地元の人にとって最適な散歩コースとして親しまれているようです。
 

爽やかな木漏れ日が気持ちいい。

ヒヨドリが歌っています。

静かに流れる川。

橋をのぞき込むと、魚の群れがいました。

お昼の花園

 日が高くなり、ご飯が恋しくなってきた頃。「森田オープンガーデン」と書かれた立て札の横に、「うどん・そば」と書かれている看板を見つけました。

 

人が一人通るのがやっとの緑のトンネルをくぐり抜けると、色鮮やかな花々が咲き誇るお庭が広がっていました。

 この「森田オープンガーデン」は、森田さんという方が、ご自宅のお庭を一般公開しているそうです。

 

お庭では可愛らしいタヌキの置物や、味のあるカカシが私たちを出迎えてくれました。

美しく咲く花たち。

小鳥の置物に心安らぎます。

 すでにお昼どきということもあり、駅から離れた場所にもかかわらず、たくさんの方で賑わっていました。しかし、せっかく来たのだから、ここでお昼を食べたい。入り口に置いてあったリストに名前を書き込んで、辛抱強く待つことにしました。おいしいご飯のためなら、我慢、我慢。

たくさんの方で賑わっていたので、自分の名前はいつ呼ばれるだろうか。今か今かと期待しながら待っているところに、突然声を掛けられました。
「ちょっと、そこのお姉さんたち!」
威勢の良い声に振り返ると、花畑の外れにある小屋から張り出したテラスに、私たちを手招きする女性がいました。
「お姉さんたち、そこの店の順番を待ってるんでしょ?こっちでカモミールティーでも飲んで待ってなさい」
 

ごちそうになったカモミールティー。

 おいしいお茶をいただいて一息ついたころ、ついにお店の方に私たちの名前が呼ばれました。初めて入るのにどことなく懐かしさを感じる店内は、お客さんの楽しげな話し声と調理場から聞こえる音で賑やかです。しばらくして、待望のうどんが現れました。

 

待ちに待ったうどんは、お箸が止まらなくなるほどのおいしさでした。

 水でしめた手打ちの細いうどんを、だしの効いたおつゆにつけてツルツルっとすすります。もちもちとコシのある食感と、おつゆの中に入っているしめじと厚揚げの組み合わせがたまりません。てんぷらは揚げたてで、抹茶塩をつけて口に頬張ると、サクサクといい音が響きます。てんぷらのカゴの中には、私が今まで見たことのない、リンゴのてんぷらも入っていました。リンゴの甘酸っぱさがてんぷらに合うというのは、意外な発見でした。

 

こもれびの足湯

 美味しいうどんでお腹も心も満たされ、元気いっぱいになったところで、再び散策へと歩みを進めます。意気揚々と歩いていると、緑に囲まれた「こもれびの足湯」という施設を発見しました。

 

 ここは、ごみ処理場の近くにあり、地下水(天然水)をごみ焼却炉の熱で温め、足湯として提供している無料の足湯施設です。タオル(100円)や手ぬぐい(200円)の販売、トイレや女性用の更衣室も備えられており、お散歩のついでに、気軽に利用することできます。私たちも、この散策での疲れを癒すために、実際に利用してみました。

 

1時間歩いて疲れた足に、嬉しい温かさ。少し熱めのお湯が身体に染み渡ります。

 とても静かで、聞こえてくるのは小鳥のさえずりと足湯に入っている人たちの楽しげな話し声だけ。まるでこの場所だけ時間が止まっているように錯覚してしまうほど、穏やかでゆったりとした雰囲気が漂います。どこか懐かしく優しい空間がそこにありました。足だけでなく、心までほっこりさせてくれるこの足湯は、都会の喧噪や日々の忙しさの隙間を通り抜け、私たちに癒しを届けてくれます。それはまるで木々の隙間から差し込む暖かい光、まさに「こもれび」そのものでした。

 

緑に囲まれた足湯でリラックス。

足湯と足湯の間にかかる小さな石橋が、何とも言えず可愛い。

 
 
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 お年寄りや子ども、そして鳥や魚といった動物にも愛される玉川上水。緑も地元の人々の優しさもたっぷりなこの土地は、歩いているだけでも自然と顔がほころぶ、不思議な魅力に満ち溢れています。私たちが散策して訪れたのはいずれも、めまぐるしく過ぎ行く日常の中で忘れかけてしまっている、懐かしくて、大切で、心にそっとしまっておきたいようなものを思い出させてくれる場所。忙しい日々で疲れた心に癒しを、そして、明日も笑顔で頑張るための元気を与えてくれる場所でした。
足湯から上がった後もなお、身体の芯に残る温もりは、小平に住む人々の心の温かさなのかもしれません。

 
 

参考文献

こもれびの足湯ホームページ http://www.kmy-eiseimiai.jp/05b_ashiyu.html
東京都水道局ホームページ https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/kouhou/pr/tamagawa/
ぶるべーのさんぽみち https://www.city.kodaira.tokyo.jp/kids/017/017990.html