梅いち凛 ~咲いた津田塾生~
楽しいだけで終われないダンスの舞台裏 〜DanceNuts〜
はじけるようなジャンプをキメる4人は、ダンスサークルのダンサーです。彼女たちの所属する「DanceNuts」(以下ダンスナッツ)は津田塾祭だけでなく、大学周辺のイベントにおいても、積極的に公演を行っています。
彼女たちが着ているのは、表舞台では決して見ることができない練習着です。一度しかない本番のために、総勢29人の部員は校舎が施錠される午後8時まで練習に打ち込みます。汗が練習着に染みた分だけ、公演中に見せる彼女たちの笑顔は太陽のように輝くのです。
ひとつのダンスを踊り切るまでには、喜怒哀楽のドラマがあります。筋肉痛にもめげず練習に取り組めるのはなぜか、繰り返し踊ることを通して何を得たのか、本番ステージで彼女たちは何を見てきたのか。ダンスナッツのメンバー4人から、観客を湧かせるダンスの「舞台裏」についてお話を伺いました。
—去年の11月から部長をつとめている松本さん。練習のとき、大変なことは何ですか。
「練習メニューを立てることです。部長がする仕事の一つですが、難しいです。他の部員に『こんな風に練習を進めるのはどうかな?』と尋ねながら決めていきます。一度では決まらないこともあります。けれど、それくらい真剣に練習時間についてみんな考えている証なのだと思っています。練習中も、楽しそうに踊れているか、飽きてしまっている部員がいないかと顔色を見ています。終わった後に部員同士が『次の練習でね』と声を掛け合って帰るのを見ると、やりがいを感じます。」
「今年も夏休み終盤の8月末から津田塾祭公演の練習が始まります。朝9時から夕方5時まで暑い体育館で踊り続けます。練習中は汗もかくし、筋肉痛も大変ですが、1年生から4年生みんなで一つのダンスを作っていくことが楽しみです。」
—入学前からダンスが趣味の美濃口さん。何を思って踊っていますか。
「ダンスって同じ振り付けを繰り返していくことで覚えていくものですが、『慣れ』はあまり良いものではないのです。練習を重ねるうちに、どうしても気抜けしたダンスになります。顔も無表情になるし、指先足先の動きに荒さが出てきがちになります。そのような『身の入っていないダンス』は見ている人にとっては、つまらないものです。」
「私は大学入学前からダンスをやってきましたが、体がかたくて、ダンスの基礎ともいえるバレエの型にあまり熱心に取り組んできませんでした。けれども、入部してからはレッスンを受け、体を折り曲げる痛みをこらえながら、型を覚えていきました。1年経ってわかったことですが、この型を活かすことでダンス一つひとつの動作がキマるんです。鏡や動画で自分の動きを確認しながら練習するときも、入部前より成長しているなあと感じます。それはきっと、先生や先輩や友人のアドバイスのおかげです。これからも、このつながりは大事にしていきたいです。」
—4年生の真木さんにとって、ダンスナッツに入っていてよかったと思うことは何でしたか。
「確かに鳥部さんの言うとおり、あっという間でした。私は、公演準備のときのことも記憶に残っています。椅子を出して客席をつくったり、看板をつくって目立つように飾り付けたり、手分けして受付をしたり。指示が錯綜しないように声を掛け合うことが大変でしたが、良い思い出です。」
「津田塾祭の公演には3年間出ましたが、学年が進むごとに違った楽しみがありました。1年生のときは、みんなと踊ることがただただ楽しかったです。2年生になると、先輩と後輩に挟まれますよね。『どうしたらみんなと楽しく踊れるか』を、鳥部さんたち同級生と悩みながらも考えていけたことが嬉しかったです。引退が迫った3年次は、踊る楽しみもしっかり満喫しながら1年生に初舞台で自信をつけてもらえるように、応援しながら見守っていました。」
「私たちは今年度卒業を控えていますが、4年生の私たちがそうであったように悩みを成長につなげていく集団であってほしいなと思います。」
編集後記
思い出を語るときの生き生きとした表情が印象的でした。私にとってダンスは客席から楽しむものでしたが、見るだけでなく踊ることも楽しんでいる4人の話を聞いて、ステージの裏側でダンサーたちがどれだけ踊ることに夢中になっているのかを知りました。彼女たちの話は、好きなことに真剣になることの大切さを改めて気づかせてくれました。