梅いち凛 ~咲いた津田塾生~

やりたいことを全力で - 尾池 花菜さん

英語をはじめ様々な外国語や国際関係学など、海外に関する学問を学べる津田塾には、外国の大学への留学に関心を持っている学生が多くいます。今回インタビューした国際関係学科4年生の尾池花菜さんも、今年の7月から1年間イギリスへ留学することになった津田塾生の一人です。将来の夢の実現のために政治を本格的に学びたいと、英語や政治学の勉学に励む一方で、大学から始めた少林寺拳法部では厳しい練習をこなし、引退までやり遂げたというタフな一面も。学ぶことへの強い意欲を持ちながら、学業以外でも充実したキャンパスライフを送っている尾池さんに、活動のモチベーションと留学を通して得たいものについてお伺いしました。



—大学に入る前から留学を考えていたそうですが、尾池さんがイギリスへの留学を決めたのは津田塾のある先生との出会いがきっかけでした。

「高校生の頃から留学したいと思っていました。その時はまだ『海外で勉強するのかっこいい』くらいの気持ちでしたが(笑)。でも、津田塾でゼミの担当の葛西弘隆先生から、政治の問題を考える時に抜けていた視点を教えてもらって、気付かされることが多かったんです。それで、『自分も葛西先生のように、学生をハッとさせられるような先生になりたい』と思って、大学教授になって政治を教えたいと考えるようになりました。そのためには、海外の資料を英語で読んだり、論文を英語で書いたりする機会も絶対に増えるので、その下地を作っておきたくて留学することに決めました。」

「私がアベリストウィス大学に留学することにした理由は主に2つあります。一つは、大学が田舎にあって少人数制を売りにしていることです。レクチャーとゼミのクラスがあるのですが、各レクチャーに全てゼミがついていて、自分の意見をアウトプットする練習ができる場になると思ったんです。そういった少人数制を大切にしているところがまさに津田塾に似ていて、アベリストウィス大学を選びました。」

「もう一つは、慣れ親しんだイギリスにある大学だからです。今までに観光や短期留学で4回イギリスに行ったことがあって、イギリスの文化や雰囲気、料理が好きなんです。人脈も結構あるので、もうホームグラウンドになっていると言えるくらいです(笑)。行ってすぐに勉強に集中できるだろうと思えたのも、イギリスの大学に決めた理由の一つです。」





—尾池さんの目が特に輝いていたのが、イギリスの建物について話してくれた時。建物から日本とは異なる価値観を感じられると言います。

「イギリスには全てレンガや石でできている建物がいっぱいあって、それも14世紀や15世紀といったすごく古いものが多く残されています。少し哲学的になってしまいますが、そこにインフィニティといいますか、『永遠なるもの』を感じて感動したんですよね(笑)。日本には『もののあはれ』や諸行無常のように『壊れていくものが美しい』という価値観がありますが、それはなんだか少し寂しいなと思って。でも、イギリスの場合は歴史あるものが脈々と残っていて、その中に自分がいるというのが魅力的ですね。」

—留学先では国際政治を専攻するとのことですが、尾池さんが国際政治に興味を持っている理由は何なのでしょうか。

「政治ってわからないことだらけで、それを一つずつわかっていきたいというのがもともとの願望でした。でも、津田塾の国際政治・国際法コースでたくさん学んでも結局わかりきらないんですよね。政治はそういうものだと思うんですが、明確な答えが出てこないんです。例えば、ある政治の問題について、賛成『派』や賛成『グループ』とはいっても、その中にいる個人に目を向けないと社会は見えてこない。だから、まず『誰が何を言っているのか』『どんな思いで言っているのか』『それはどんな文脈で言われているのか』をまとめて、それをみんなに伝えられるようになりたいです。」


 —大学教授になるという夢に向かって日々勉学に励む尾池さんですが、「ただの真面目な優等生」ではないところが彼女の魅力です。もう一つの顔とも言える少林寺拳法部での奮闘についてもお伺いしました。 
 

「少林寺拳法部で学んだことは色々ありますが、その一つが学び方のスタンスですね。まず先輩から教わった技を覚えて、その技でどう動くかを学ぶのですが、その後は体が無意識にできるようになるまでひたすら反復練習するんです。武道は完全にマスターすることができないものですが、『自分が何も考えないでできる』という段階までいったらパーフェクトだと思っています。そこまで到達するためには回数と時間が必要だなと強く感じていましたね。」
 

「練習は正直つらかったです(笑)。月・水・金・土の週4回練習があって、大会前になると正規練習が始まる5時から夜の10時や11時半までやっていました。勉強と少林寺拳法部の両立は本当に大変でしたし、『少林寺拳法をするために大学に入ったわけじゃないのに』と思ったこともありました。それでも乗り越えられたのは、練習して『ちょっとできたな』と感じる瞬間がすごく楽しかったからです。少林寺拳法は本当に努力がよく表れるもので、時間をかけて何回も練習すればそれだけ上達が目に見えてわかったので、純粋に『上手くなりたい』という気持ちでつらい練習も頑張っていました。」 

「それから、ありきたりですが友達が一緒にやっていたというのも大きかったですね。友達が11時まで練習しているのを見たり、2人一組で行う組演武では上手い人や一生懸命やっている人が相手だったりすると、『自分もやらなきゃ』と思っていました。あと、組演武では上手くないと自分のパンチやキックで相手や自分がケガをしてしまうので、『相手のために上手くなりたい』という気持ちもありました。私自身、目を狙う技を相手から受けた時にパンチされて目が内出血してしまったこともありましたが、みんな上手くなるために本気でやっていたので文句は言えませんでしたね(笑)。」

「勉強でも少林寺拳法でも、やれなかったことは多くあるけれど、『努力はした』と言えるくらいには自分の中ではやりきれたと思っています。だから、成績が出た後や部活を引退した後も、『努力しようとした自分』を責めることはありませんでした。『やりたいことを全力で』という言葉がありますが、常にその時の自分がやれる最大限のことをしたからこそ、自分の中では確かに成長できたという実感があります。」



—7月から始まる1年間の留学生活。尾池さんが大学の外で学びたいことを最後に教えていただきました。

「まだわからないことだらけなので、まずはとにかく色々なものを見たいと思っています。実はウェールズに行くのが初めてなので、ブリティッシュと異なるウェーリッシュの街並みや博物館を見てみたいです。今は独立論に関心があるので、ウェールズでの生活を経験することは『民族って何だろう?』とか『文化って何だろう?』と考える時に参考になるとも思っています。また、ヨーロッパの大陸に近いので、いろんな国にも行ってみたいですね。

—まぶしい笑顔でハキハキと楽しそうに留学や将来の夢のことを話していたのが印象的で、私も尾池さんのお話を聞いているうちに「政治って面白いんだ」と思えるようになりました。勉強も少林寺拳法も「やりたいことを全力で」やってきた彼女が、イギリスでもさらに成長し活躍できるよう応援しています。