梅いち凛 ~咲いた津田塾生~
海の向こうカンボジアへ 日々、模索する「学生の国際協力」の裏側とは?
アジア諸国の1つ、カンボジア。1年中温暖な気候で、世界遺産アンコール・ワットには日本からも多くの観光客が訪れます。また、日本にはない屋台文化の国。通りにはさまざまな食べ物が売られ、通りを歩くといつも賑やかな声が。ニコニコと人びとも温かい魅力的な国です。
津田塾大学にはそのカンボジアでボランティア活動を行う団体があります。その名は「学生団体レアスマイル」。2009年3月に団体が発足し、津田塾生のみで構成されています。小平キャンパスでの週3回のミーティングなど国内活動はもちろん、年2回カンボジアへ渡航し、保健衛生の教育を行うなど精力的に活動中です。
「レアスマイル」の語源はクメール語(カンボジアの言語)で「光」を表す言葉「レアスマイ」からとられ、「rare」「smile」の「尊い笑顔」とも掛けています。「世界が光り輝く笑顔で溢れるように」そんな意味が込められているそう。
今回、plum gardenはレアスマイルに所属する4名の学生にお話を伺いました。
4月に大学に入学したばかりのフレッシュな1年生、佳織さん。数ヶ月経った今、活動に対してどう感じていますか。
「高校の時に英語コースに通っていたことがあって、国際協力にはもともと興味がありました。特に印象的だったのは、高校生の時に読んだマララさんの本。あの本を読んで、国際協力や女子教育の支援に携わりたいという思いが私の中で強まりました。この団体でなら、その思いが叶うと思ったんです。」
「海外に1人で移住して国際協力をしている女性のドキュメンタリーなどを見ると、最初、私も頑張ったらできるんじゃないかと簡単に考えていました。でも、団体に入ってみたらそういった活動は強い意志がなくてはできないものだとわかりました。英語力やお金も必要だし……。と簡単に成し遂げられるものではないと入ってみて気づきました。」
「WC(Work Camp。レアスマイルは春と夏に現地へ実際に渡航している)で行う企画などの事前準備は大変だなと感じます。でも、先輩方がとても熱い意志を持っているから、それを見てすごいな、自分も頑張らなくちゃ、と思います。今まで頑張ってきたことの達成感を得るうえでも、来年のWCには絶対に行きたいです。」
2年生からレアスマイルに入ったという秋香さん。思い立った経緯、実際に入ってみてどうでしたか。
「1年生の時はこの団体には所属していなかったんです。でも、2年生になって考え方が少し変わって、楽しいだけじゃなくて、社会に貢献する活動に挑戦してみたいと思うようになりました。悩んでいたところ、他の運動サークルで一緒だった七彩さんにお話を聞かせていただきました。その時、この先輩についていきたいと思ったんです。」
「入る前までは、国際協力というのは自分で『こういうものがしたい』と思ったらすぐに実行に移すイメージが強くて、自分の思ったことが全部できるとばかり思っていました。でも、それは違っていて、支援先のニーズもあるので、決して自己満足ではいけないとわかりました。また、カンボジアに行けると聞いていたので、最初はワクワク感の方が強かったのですが、実際に国内活動で準備をしてみると、思った以上に大変だということに気づきました。」
「今はまだ、自分の中で達成感というものは発見できていません。模索中という感じです。ただ今年の夏、初めてカンボジアへWCに行きます。佳織さんのいう通り津田塾祭(以下:塾祭)やWCが終わると、自分の中で見えてくるものがあるのかなって。それがすごく楽しみですね。」
カンボジアにも2回渡航している、菜央美さん。2年生として、代表やメンバーを支えるかたわら、今までをどう振り返りますか。
「私は、もともと国際協力には興味があったわけではないんです。サークルを探していたところ、レアスマイルの立て看板(4月のサークルオリエンテーションの時に本館の前に一斉に張り出される各サークルを紹介する看板のこと)に、HOC(レアスマイルが主に支援しているカンボジアの孤児院。正式名称はHOPE OF CHILDREN)の子供たちの笑顔の写真がいっぱい貼ってあるのを見つけて、『なんて楽しそうなんだろう!』と思いました。その後、サークルに見学へ行った時も先輩方がすごくキラキラとされていて、入ることを決めました。」
「ある学生団体の方とこんな話をしたんです。『1年は365日あるけど実際に現地で活動するのは、ほんの数日だよね』って。その言葉で、自分が現地に行っている期間の少なさを感じて、改めて準備の大切さに気づきました。また、学生団体という性質上、3年経ったら引退や代替わりが待っているわけで、同じ人がずっと支援できるわけではありません。限界があるのは変わらない。でも、その中でどれだけ話し合って考えていけるかが大切なんだと思います。」
「学生団体に入って、NGOやNPOと比べてお金もない大学生に何ができるのと思うことがあります。そして、実際の活動でも自分が『与えている』というよりは現地の人に元気や学びを『与えてもらっている』という感覚に近いです。一体自分は何に貢献できているんだろうと考えると、答えが見つからないことも多いですけども。考えて考えて、自分で『これかな』って進んでいくのが小さな達成感かもしれません。」
現在、学生代表を務めている3年生の七彩さん。1年の時からレアスマイルに所属しています。引退が近づく今、これまでをどう振り返りますか。また、今後の展望などありましたら教えてください。
「私は、もともと国際協力に興味がありました。きっかけは、小学生の時に見たカンボジアのスラム街で生きる子供たちの映像です。家族のために道に落ちている金属を売ってお金にしていました。私にとってすごくショックな映像で、この子たちのために何かできないかなと思ったのが始まりです。津田塾のパンフレットにレアスマイルのことが大々的に紹介されていたのを偶然目にし、団体に入ることを決めました。」
「この団体に入って初めてリーダーを任されました。リーダーっていろんなタイプがあると思うんです。例えば、自分の意志表明をして『みんなついてきて!』と仲間をグイグイ引っ張って行くタイプ、みんなの意見をくみ取りながら『縁の下の力もち』のような存在になって押し上げて行くタイプ……。最初は、私、前者になりたかったんです。周りの学生代表さんを見ていても前者の人が多くて、かっこいいなって思って。でも、実際にレアスマイルにそういうタイプが合うかと考えるとそうではないんです。今までの代表さんを見ていても、一人一人を大事にして、みんなの意見を尊重する方が多くて、私も次第に、そういう代表になりたいと思うようになりました。」
「リーダーを経験してみて、メンバー(現在約40名が在籍中)の考えや興味がそれぞれ違う中でまとめていくのは難しいと感じました。『ちょっと私ミスっちゃったかも』って思った時もあるくらい。うまくいかなくて辛い時もありました。ただ、レアスマイルが一人ひとりの居場所であってほしいという思いは今も変わりません。私が引退した後も、あったかいレアスマイルであってほしいなあって思いますね。あと、今後新たにフリースクールやプノンペンの孤児院を訪問する予定です。私たちの活動が、少しでも多くの子供たちに広がればいいなと思っています。」
「なぜこれほどまでにカンボジアに魅了されるのか」。疑問に思った私は、カンボジアに数回の渡航経験があるお二人に現地の魅力をお聞きしました。
七彩さん:「あらためて聞かれると分からないのですが(笑)、雰囲気が好きです。路地裏にちっちゃいお店がバーっと並んでいて、おばちゃんが野菜切っている様子とかも。レストランも綺麗にガラス張りではなくて開放的で、テーブルを触るとちょっと砂がついていたりとか(笑)。そういうところも含めて全部素敵だなあって思いますね。あとは、人の影響が結構大きいです。いつも同行してくれる通訳の方は第二のパパのような存在。安心していられる人が近くにいるのは、魅力の1つかなって思います。」
菜央美さん:「人が大好きです。団体に入るまではカンボジアって東南アジアのどこだっけ?という感じでした。1回WCに行ってから『カンボジア』って聞くと、お世話になった方々とか、子供たちの顔がすぐに思い浮かびます。すごく好きだなあって改めて感じます。私は2017年夏のWCでリーダーを務めています。今回WCに行かないメンバーにも人の繋がりを知ってもらうため、ミーティングの時間に現地の人について紹介するよう心がけています。」
—最後にこの記事の読者の方にメッセージをお願いします!
佳織さん&秋香さん:「塾祭に向けて準備をしています。模擬店では、試行錯誤を重ねて完成した『肉巻きおにぎり』を販売する予定です。当日は塾祭を通して多くの方にレアスマイルのことを知っていただきたいです。」
塾祭を訪れた際はぜひレアスマイルのブースを覗いてみてくださいね!
レアスマイルの最新情報は以下のサイトからチェックすることができます。
HP: https://raresmile.jimdo.com
Twitter: https://twitter.com/raresmile10
Facebook: https://www.facebook.com/pg/学生団体レアスマイル
Instagram: https://www.instagram.com/raresmile_official/
この記事を通して、レアスマイルの活動が津田塾を飛び越えてさらに広がり、これからボランティアサークルに入ろうと考えている学生の後押しにもなればと思います。