梅いち凛 ~咲いた津田塾生~

千駄ヶ谷から世界に広がる、盤上の交流



日本を代表する文化の一つ、囲碁と将棋。静寂のなか繰り出される一手の奥深さは、多くのファンを魅了し続けています。
今回は、千駄ヶ谷キャンパスで囲碁・将棋部を立ち上げた3年生のお二人に、お話を伺いました。


いつ、どのくらいの頻度で活動をしていますか。

以前は、毎週火曜・木曜を主な活動日としていました。現在は、部員が増えたため日程の調整がつかず、部員が複数人集まれる日に不定期に集まって活動しています。
団体戦などにも参加しているため、大会直前には羽生善治先生、藤井聡太先生といったプロ棋士の方々の棋譜を用いながら大会参加者を中心に練習しています。

部員にはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。

部員は全部で17人います。4年生が1人、3年生が12人、2年生が2人、1年生が2人です。未経験者にとってハードルが高くないのがこの部活の良いところです。部員のほとんどが囲碁・将棋の初心者で、石や駒の動かし方など基本を一から勉強しています。
昨年から課外活動奨励金を頂き、道具や教材の準備資金として、また大会の参加費用として活用しています。大会はこれまでに2度出場しているのですが、女性限定の団体戦を選ぶことで挑戦しやすいようにしています。
大会では抽選会などもあります。出場させていただいた女性限定の団体戦では、対局以外にもプロ棋士の先生方によるトークショーや参加賞もあり、部員のモチベーションに繋がっています。

囲碁・将棋部の部員。顧問の曽根原 登 教授と一緒に。

土田さんは、第2回ねこまど女子級位者団体戦に出場。相手の出方に応じて自分の手を試行錯誤するなど一手の重みを改めて感じたそう。

左側が津田塾大学のチーム。年齢関係なく真剣勝負です。

どのような背景で発足したのですか。

総合政策学部のキャンパスのある千駄ヶ谷には、将棋会館や国立能楽堂など日本文化を代表する施設が多くあります。私たちは東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場である新国立競技場・東京体育館に最も近いキャンパスであるという利点を活かし、2020年に向けてさまざまな活動をしていこうと、2017年4月、複数のワーキンググループ(以下WG)から構成される『梅五輪プロジェクト』を立ち上げました。
初代部長の戸根木がリーダーを務める「将棋会館連携WG」では、将棋初心者のメンバーばかりでしたが、公益社団法人日本将棋連盟の方々と協働していくには、自分たちも将棋の勉強をする必要があると考え、2017年11月15日、いいいごの日(部員考案)に「津田塾大学 囲碁・将棋部」を設立しました。

囲碁と将棋、両方できる部活は珍しいと感じます。

将棋だけではなく囲碁も含めたことには、「自ら語ることのできる日本文化を少しでも増やしたい」という思いがあります。
日本人は自国の文化を説明することが苦手、というようなことをよく言われますが、津田塾生は将来国際的に活躍していくことを期待されています。そのような場面で、1つでも多く日本の文化に精通していることは自分にとってプラスになると考えました。海外では将棋よりも囲碁のプレイヤーが多く、両方のボードゲームを楽しむことができれば、交友関係もより広がると思います。
また、初代部長である戸根木が幼少期から囲碁を続けており、現在囲碁教室でインストラクターをしているため、自ら部員に教えられるということもありました。

戸根木さんの通う囲碁教室からご好意でいただいた、ポップな色合いの囲碁。 バーに合うように考案されたデザインで、気軽に囲碁を楽しんでもらいたいという思いがあるそう。

囲碁・将棋部のことを知っている学外の方も多いと聞きます。

梅五輪プロジェクトにおける日本将棋連盟との関係などもあり、棋士の方々から、盤駒、碁盤、碁石や書籍などをご厚意で贈っていただいたり、指導対局をしていただいたり、とても環境に恵まれています。また、メディアに出演した時は特に反響が大きく、視聴者の方々からお手紙、書籍や将棋グッズをいただいたこともあります。
最近では、InstagramなどのSNSに英語話者の方からメッセージをいただくなど、少しずつ海外への普及活動に貢献していることを実感しています。

津田塾大学 囲碁・将棋部
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Twitter     <https://twitter.com/umegoshogi>

今までに取りあげられた活動にはどんなものがありますか?

2018年4月、日本経済新聞の「キャンパス発 この一品」の記事に掲載されました。梅五輪プロジェクトの将棋会館連携WGにオファーがあり、昨年2月に完成した英語版の将棋パンフレットとあわせて囲碁・将棋部についても紹介しました。
また、2018年10月には、女流棋士の中倉彰子さんより取材を受け、株式会社ラーニング・イニシアティブさんの新しい学びの情報流通メディア「Best Future」にて記事が掲載されています。2018年10月28日放送のNHK「将棋フォーカス」では、乃木坂46の元メンバーである伊藤かりんさんと部員3人が三番勝負をした模様が放映されました。
記事内では、女子大で囲碁・将棋部の活動があることの珍しさ、日本将棋連盟さんとの連携とご厚意により棋士の方々からご指導を受けられるという魅力などを取り上げていただきました。

囲碁・将棋部が作成に協力した、初心者向け英語版将棋パンフレット。 駒の動かし方だけでなく、囲碁・将棋において欠かせない礼の作法について理解を深められる。

活動における悩みは何かありますか。

囲碁・将棋部には部室がありません。もともと大学のカフェテリアやラーニングコモンズなどの共用スペースで活動していたのですが、年々それらの場所を利用する学生が増えているため、活動場所の確保が難しくなっています。道具や書籍を置くためのスペースや、対局のためのスペースを確保できるようなサポートがあるとありがたいです。
また、勉強や課外活動などで忙しい部員がほとんどであるため、なかなか活動日を合わせられていないのが現状です。オンラインでの対戦などを活用して、少しでも活動できる機会を作れるようにしたいと考えています。

2020年に向けた目標はありますか?

まず一つ目は、全国大会に出場すること。これは結成一年目からの目標です。女子の大会や全国大会での経験を自分の自信にしてほしいと考えています。
二つ目に、初心者の方に囲碁・将棋の打ち方、指し方を伝えられるようになること。国際交流の多い津田塾の学生にある程度教えられるスキルがあれば、そこで交流の輪を広げることができます。
三つ目に、日本文化である囲碁・将棋を、自信をもって日本語でも英語でも語れるようになること。過去には英訳パンフレットを作成した際に、現在は英語で将棋のルールや歴史を説明する台本を作成する際に、知識面でサポートしています。
囲碁・将棋は放った手だけで「会話」することができるため、目の不自由な方でも対戦できる盲人将棋・視覚障害者用囲碁も実施されています。五輪期間中、多言語を使用されている訪日外国人観光客の方々と、言語を介さずとも盤上で「会話」できるようなレベル、相手の手の意図が考えられるレベルまで腕をあげることが最大の目標です。


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いかがでしたでしょうか。
梅五輪プロジェクトから誕生した、囲碁・将棋部。
学外でも活動が取り上げられることが多く、今回取材をさせていただいたことでより皆さんの活躍を知ることができました!
来年にはいよいよ、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。
千駄ヶ谷の地から世界中の人々へ、囲碁・将棋の魅力がたくさん伝わりますように。