梅いち凛 ~咲いた津田塾生~
世界一に輝いたラフティング部
みなさんは、レースラフティングという競技をご存じでしょうか。ラフティングと聞くと、川の激流を活かしたスリル満点な川下りを楽しむアクティビティを想像されると思いますが、レースラフティングとは、自然の河川などにコースを設定し、4人制または6人制でタイムを競うスポーツです。
今年、ボスニア・ヘルツェゴビナで行われたレースラフティング世界大会女子の部で、一橋・津田塾大学ラフティング部ストローム会の「Ivy」が総合優勝※1に輝きました。今回は、Ivyのメンバーである3名の津田塾生にお話を伺いました。ぜひ、お楽しみください!
※1世界大会の結果
田中(インタビュアー):はじめに、Ivyが創設された経緯についてお伺いしたいです。
近藤さん:2024年の5月に群馬県のみなかみ町で大きな大会があり、その大会のために組まれたチームでした。
田中:チームというのはその都度、編成されるということなのでしょうか。
近藤さん:そうです。ずっと同じチームというわけではなくて大会が終わったら解散みたいな。
田中:津田塾大学は日々の課題が多いと思うのですが、学業との両立はどうされていますか。
若山さん:大会が 第1ターム※2にあったので、第1タームは少し授業を減らして調整しました。週に2、3回川崎で朝練があるので、それ以外の時間に課題を詰め込んでいました。いつも授業に間に合うように朝練を終わらせています。
※2津田塾大学では2017年にクォーター制(4ターム制)が導入された。第1タームとは4月中旬から6月下旬を指す。
田中:朝練ではどのようなことを行うのでしょうか。
若山さん:朝練は、基本的に波のない川で行います。多分、皆さんが想像しているラフティングとは違うフラットな川で行うので、持久力をつけるための練習が多いですね。
田中:Ivyの強みというのはどのような部分でしょうか。
近藤さん:結成当時は、実力がなくて大変でした。どうしても、 ダウンリバー※3のようにパワーが必要になる種目もあるので、女子4人で行うというのは、挑戦的な部分ではありました。でも、 本番において力が発揮できるメンバーだったことが強みのひとつだと思います。ラフティングって固定の4人で行う競技なので、相性が重要になるんですよね。そのため、チームのメンバーは時間をかけて決めました。
※3ダウンリバー:1時間弱、漕ぎ続ける種目
田中:ラフティング部に入部してよかったことはどんなことですか。
小林さん:チームスポーツなので、団結力を感じる場面が多いことです。運動部に入るのは初めてで練習についていけるか不安がありましたが、他のメンバーがいるのでポジティブな気持ちでいられます。
近藤さん:よかったことはたくさんあるのですが、全国各地をみんなで巡ることができるというのが魅力の一つです。さらに、マイナースポーツであるからこそ、学生でも世界大会に出場できるというのは魅力的なポイントだと思います。
若山さん:自然が好きなので、太陽の光を浴びながら競技ができることが楽しいです。それ以上に、切磋琢磨し合えるメンバーに出会えたのが良かったと思います。
田中:ラフティングと聞くと、自然を相手に川下りをするイメージがあるのですが、身の危険を感じたことはありますか。
若山さん:水量によって、川の雰囲気が大きく変わります。1日の中だけでも水位が上がったり下がったりすることがあって。水が少なすぎても多すぎても危険です。しかも、船がゴム製なので安定しているわけではなく、波の影響を受けやすいんですよ。ひっくりることもあるので怖いですね。
小林さん:5月に開催された大会では、水量が多くてひっくり返りました。他の川とは違って激しい川だったので、1回ひっくり返ったら、なかなかフラットな場所に行けなくて。ずっとその波に揉まれながら流されました。人生で1番怖かった瞬間でしたね。
田中:Ivyのみなさまは、代表選考会を経て日本代表に選出されました。日本代表に内定するまでのスケジュールと、 内定後のスケジュールについてお伺いしたいです。
近藤さん:今年の2月上旬に、徳島県にある吉野川で世界大会に向けての選考会がありました。そこで日本代表の認定をしていただいて、そこから2ヶ月間ほど世界大会に向けて練習をしたという感じです。
若山さん:Ivyとしては世界大会に出ることは、あまり考えていなかったです。吉野川で行われた大会がきっと経験値になるという思いだけで参加したので、 まさか日本代表になるとは思いませんでした。
田中:日本代表に決まってからは、練習を大きく変えましたか。
近藤さん:世界大会で使用する船は、いつも練習してる船とは違って、もう少し大きい船で行います。なので、世界大会仕様の船に乗って練習を行いました。2年前、私たちの先輩が世界大会の女子の部に出場したので、その先輩方に現地の川の様子とかを聞いて、練習メニューを考えました。
田中:世界大会には、海外の選手も多くいたと思うのですが交流はありましたか。
近藤さん:同じ女子の部のライバルチームに、チェコ共和国がいたんですけど、その国の選手たちは私たちと同年代で、大会後に交流がありました。その他には表彰式の際、恒例行事のユニフォーム交換でライバルチームとのコミュニケーションをとる機会がありました。
田中:その世界大会でIvyは 4つの種目※4に出場したと思いますが、Ivyが最も得意とする種目はありますか。
※4世界選手権などのクラスでは、スプリント※5・H2H※6・スラローム※7・ダウンリバーの4種目の総合成績で順位が決まる。
※5スプリント:1艇ずつスタートするタイムトライアル形式の短距離レース。
※6H2H:2艇同時スタートで競う短距離レース。トーナメント方式。
※7スラローム:激流に設置されたゲートを通過するタイムを競う。
若山さん:スラロームが得意です。パワーだけでは攻略できない種目なので、チームの力を見極めて作戦を立てるんですよ。どれだけ自分たちのレベルを理解しているかを問われると思うので、作戦が成功したとき達成感があります。
田中:逆にこのコースは苦手だなというのはありますか。
小林さん:ダウンリバーですね。川自体あまり流れがなくて、自分たちで漕がないと船が進まないんですよ。その中を1時間漕ぎ続けるのは辛かったです。ダウンリバーは周りを見渡せば、ライバルの船がどこにあるのか分かります。また、ダウンリバーの種目が最終日だったので、これで1位にならないと総合も1位になれないみたいな状況でした。なので、絶対抜かされないようにしようと自分を鼓舞しました。このダウンリバーで1位になったので、総合で優勝できたと思います。
田中:最後に後輩や受験生へメッセージをお願いします。
近藤さん:3年生ということもあり、もうすぐ部活を引退します。部員の協力もあって、世界大会に出ることができた部分もあるので、後輩たちだけではなく、いろいろな人たちに世界大会で得た知見や技術を還元していきたいと思います。また、世界大会の楽しさやラフティングを続けることの楽しさを伝えていきたいです。
若山さん:私もあと2ヶ月で引退します。 私たちがIvyを組んだ時に先輩方にサポートしてもらったので、もし女子で世界大会に挑戦したいなどの希望があれば、精神面のサポートができたらいいです。
小林さん:ラフティングはおとなしい人でも活動的な人でも楽しめるスポーツだし、 何より世界大会を目指せる部活なので、もし津田塾に入学したら、ぜひラフティング部に入ってほしいです。
Ivyのインタビューはいかがだったでしょうか。インタビューではチームの団結力が印象的でした。世界大会で優勝と聞くと華やかなイメージがありますが、朝練を行うなど地道な努力の賜物だと感じました。記事を通して、レースラフティングの魅力を感じてもらえたら幸いです。
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