人生と学び

福島で得た学び

2ヶ月間の長かった春休みが終了し、2024年度がスタートしました。
みなさんは、春休みをどのように過ごしましたか?

私は、学外学修・キャリアセンターで紹介された「地域ベンチャー留学」に参加しました。
地域ベンチャー留学とは、NPO法人ETIC.が主催する実践型インターンシップ*1プログラムで、日本全国の挑戦を続ける地域企業やNPOの経営者・リーダーの右腕となり、新規事業や商品開発などにチャレンジします。
1ヶ月間現地に滞在するプログラムや、私が参加した現地と東京を行き来するハイブリッド方式のプログラム、完全オンラインで行うプログラムがあり、自分の生活スタイルに合わせて選ぶことができます。

*1 インターンシップ:特定の職の経験を積むために、企業や組織において一定の期間従事すること。

たくさんのプログラムがある中で、私は福島県郡山市のNPO法人コースターで約2ヶ月間のインターンシップを行いました。

【郡山駅の様子】

NPO法人コースターは
1.コミュニティスペースの運営
2.まちづくり支援事業
3.人材育成事業
を行う団体です。こちらの団体で東日本大震災により故郷を離れて郡山市に避難している方々と交流をしました。

こちらの団体がインターン生*2を受け入れてこのようなプロジェクトを実施している背景には、東日本大震災があります。

*2 インターン生:インターンシップを行う学生

2011年3月11日、東日本を襲ったマグニチュード9.0の地震。
街は津波に飲み込まれ、東京電力福島第一原子力発電所では次々と水素爆発が起こりました。
震災から13年が経ち、インフラ*3の改善が進み街が復興する一方で、原発事故による規制が続くがために故郷に戻ることができない方々が、今もなお避難生活を続けています。

*3 インフラ:インフラストラクチャーの略。社会や経済、国民の生活を支える基盤のこと。

【3.11 復興の灯火】

今回私がインターンシップを行った福島県郡山市では、原発事故によって避難してきた方々が、復興公営住宅のある団地で生活をしています。
故郷に戻ることができず、知らない町での知らない人たちとの生活。
郡山市との接点が少なく、肩身の狭い思いをしている人びと......。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で人との関わりが薄れている状況になっているのです。

このプロジェクトの目的の1つに、避難先として郡山市の復興公営住宅に住む方々に郡山市のことを知ってもらい、町との関係性作りを支援していくことがあります。
そのために、私たちインターン生は大きく分けて次の2つの活動を行いました。

①被災地の見学
②団地に住む避難者のみなさんとの交流

①被災地の見学

私が初めて現地に行った日、福島県双葉郡の被害跡やさまざまな資料館を見学しました。
倒壊している家屋、保管されている放射能を浴びた土、復旧作業を進めるショベルカーなど見るもの全てに衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。

その光景は13年の月日が経ったとは思えない、まるで時間が止まったような世界でした。
私がこれまで過ごしてきた時間は決して当たり前でないことを肌で感じたのです。

【震災遺構 浪江町立請戸小学校】

②団地に住む避難者のみなさんとの交流

避難者のみなさんが現在生活している郡山市の魅力を伝えるためのワークショップ*4を開いたり、バスで郡山市を散策したりしました。
東日本大震災を経験されたみなさんと関わる上で、「住民は何を必要としているのか」、「震災を知らない私たちにできることは何か」、「震災の話をするのはタブーなのか」と思い悩まずにはいられません。
しかし、共に時間を過ごしていく中で、住民と真摯に向き合うことで自然な会話が生まれ、震災当時の話を伺えることもありました。
震災当時の生活、団地の方との人間関係、趣味の話をしたり、さらには郡山のお土産やお手製の手袋やキーホルダーを頂いたりもしました。
このようにして2ヶ月間で住民のみなさんと少しずつ距離を縮めることができ、私たちインターン生にとってもいい出会いとなりました。 

*4 ワークショップ:参加者の主体性を重視した体験型の講座

【団地でのワークショップの様子】

けれども、たとえ心配でも、長く付き合っているスタッフの方でさえ住民の方々のプライベートには深く踏み込むことはできないと感じました。私たちインターン生は、生活の質の向上に向けたきっかけを提供するのであり、生活を無理矢理変えるべきではない、1歩引いて考え、見守るのも大切だと考えました。

震災から13年が経ち、インフラが大方回復する中で心の面での復興は時間のかかるものであり、本人以外は誰1人としてその人の気持ちはわからないものだと思います。
どんな境遇の方と関わる上でも、謙虚で真摯に向き合う姿勢が大切なのだと感じました。


【団地訪問の様子】

最後に

いかがでしたか?

インターンシップで得た学びは、ここに書ききれないほどあります。
福島県のインターンシップに限らず言えることは、大学内での学びでは得られないものが学外にたくさんあるということです。

学外学修*5の情報提供が多いのは津田塾のいいところの1つだと思います!
特に、第2タームは津田塾限定のプログラムも多く開催されております。
今年度は募集を締め切ったものもありますが、来年、再来年ぜひ挑戦してみてください!
まずは在学生向けポータルサイトをチェックしてみることをおすすめします。

今回の地域ベンチャー留学を通して、自分が経験したことのない世界に踏み込んで視野が広がったように思います。福島に行くことがなければ考えなかったであろうことがたくさんあります。
この春休みで得た経験、出会いを糧にこれからの大学生活もたくさんのことに挑戦していきたいです。

*5 学外学修:津田塾における「学外学修」は、主に第2タームや長期休暇を活用し、インターンシップやボランティアなどの活動を通じて自律的に学外で学修する活動を指します。