わたしと津田塾大学

わたしと津田塾#23-「不安を感じつつも、一歩踏み出してみる勇気」

Sookyeong Hong先生 (学芸学部 国際関係学科)

Sookyeong Hong 先生

津田塾大学ではどのようなことを教えていますか。

現代文化論と国際日本文化論という授業を担当しています。現代文化論は「食」という行為や食べ物を通じて、現代社会のいろいろな事象を見ていくという内容です。もう一方の国際日本文化論は、テーマごとに国を超えた視点で日本と東アジアの20世紀を見ていくという内容です。今年着任したばかりなので卒論を執筆する4年セミナーは担当していませんが、1・2・3年生セミナーも教えています。

先生と津田塾大学との出会いを教えてください。

津田梅子という人物は、日本近代史を研究している立場からすると非常に有名な人なので、以前から津田塾大学を知っていました。たまたま私がシンガポールでポスドク(ポストドクター)をしていたときに教員公募のアナウンスが出て、ちょうどアジアのどこかの大学で働きたいなと思っていたので、応募してみたんです。それが出会いですね。

津田塾大学生の印象を教えてください。

着任が決まったとき、周りの人から「とても真面目な学生たちだよ」と言われていたのですが、実際に来てみて「確かにそうだな」と思いました(笑)。講義の後に書いてもらうレスポンスシートや課題レポートを読んでいると、内容の理解度とは別に「学び」そのものに対して真面目な態度を示す学生が多いように思います。そして、学生の皆さんは優しいですね。例えば、私は日本語で授業をするのは初めてなので、授業中にも「なんだっけ」って単語が思うように出てこないことがあるのですが、そんなときに学生の顔を見たら、みんな応援しているような顔をしてくれていて(笑)。「優しいな」、「かわいいな」って思っています。私の表現が正確じゃないこともあるし、間違ってしまうこともあるのですが、理解しようと頑張ってくれて、ありがたいです。
また、授業で話したことを自分の経験に基づいて理解しようとする姿勢をもっている人が多いな、と感じています。例えば授業で「食」の問題や「原発と核」の問題をテーマに扱った際、自分の毎日の「食」につなげて考えていたり、3.11の記憶を思い出して考えていたりする姿が多く見られると思います。自分の外にある知識でも、ものにしようとするには努力が必要です。だから、そういう意味で自分との関わりを作ろうとする積極的な態度がたくさん見られるのは印象的ですね。

Hong先生がアメリカ留学時に使っていたテニスのラケットとシューズ。日本でテニスを再開するべく、常に研究室に置いているのだとか。「これを読む学生の誰かが、一緒にやりたいと思ってくれたら嬉しいですね」と笑顔で話してくださいました。

津田塾大学に来て驚いたことを教えてください。

私は学部生時代も院生時代も、規模の大きい大学にいたので、津田塾の規模には驚きました。規模の小さい大学ならではの運営方法や教育方針は新鮮です。例えば、セミナーでは先生と深く関わることになるので、学生一人ひとりに対してとても丁寧に指導を行えます。規模の大きい大学だとセミナーも選択式だったりしますし、実際私の学部の時のセミナーはここまで先生と密な関係の築けるものではなかったというか、そもそも学科全体が学生一人ひとりにあまり興味が無かったような気がします。なので、小規模大学ならではのメリットというか、学生の個性を大切にしているのは驚いたし、こういう環境で大学4年間を過ごせるのは本当にいい経験になるだろうなと、うらやましく思っています。

Hong先生は韓国の大学院で修士課程を修了された後、アメリカで博士号を取得し、シンガポールでポストドクターをしていたという経歴があります。新しい環境に足を踏み入れるのに、不安を感じたりしなかったのでしょうか。

もちろん不安はありました。私は怖がりで、全然大胆な性格ではありませんから。はじめての留学の際、それまで長期の海外生活を経験したこともなかったのに、いきなり行ったこともない場所で長期間過ごすことになるわけですから、新しい生活や環境に適応できるかどうか、という不安はありました。けれど、やっぱり進学も留学もやってみたい気持ちのほうが勝ったのだと思います。不安を感じる一方で「やってみる」という強い決心も、自分のなかにありました。津田塾の学生の皆さんもそうなるのではないかなとも思っています。私が初めて外国に出たのは20代後半でしたし、大学時代はまさか外国で生活したり、仕事をすることになるなんて思ってもみませんでした。だから皆さんも、不安を感じても「一歩踏み出してみる勇気」をもってほしいです。

今後の目標やビジョンを教えてください。

目の前の目標を決めるタイプなので、小さな目標としては、日本語を上達させたいと思っています。私の専門は日本近代史なので日本語の論文は多少読み慣れてはいました。しかし、たとえ漢字の意味を知っていても、その漢字の日本語の読み方を知らないと、普段の会話や講義のなかで使うことができず、それではその語彙を知らないも同然なんです。なので、私にとっては、日本語は文語より口語での表現の方が難しいと思います。長期休暇中に、また改めて日本語を勉強し直したいです。
自分の研究については、「食」以外にも、医学史や社会医学にも興味があるのでそれも追及していきたいと思っています。また、3年生のセミナー紹介の際、少しジェンダーのことにも触れたのですが、その部分に反応してセミナー相談に来てくれた学生が半数以上いて、関心の高さを感じました。今の学生は特に、LGBT含めてジェンダーセクシュアリティにとても興味があるように感じますし、当事者性をもって考えている人が多いように思います。学生たちからの刺激を受けて、これから研究のアプローチ方法の一つとしてジェンダーの視点をさらに取り入れたいと考えています。いつも、どんなときでもジェンダーはとても大事なテーマですから、私もこれから学生たちと一緒に勉強していきたいですね。

学生に向けて一言お願いします。

私自身、学生時代は将来について悩んだこともたくさんありました。それでも大学時代の4年間というのは、色々考えたりやってみたりできる恵まれた時期だと思います。学生の皆さん、この4年間を大切にして、何かを思いきり楽しんだり、勉強したりして、たくさん経験を重ねてください。