わたしと津田塾大学

悩める後輩を陰で支える上級生

新型コロナウイルスの感染防止対策として津田塾大学は第1タームよりオンライン授業を行うこととなり、新入生が相談できる相手は例年よりも少なくなってしまいました。このような状況でも新入生の力になろうと自ら動いた上級生がいます。今回はそのような上級生の中から、匿名で寄せられる質問に答えるTwitterのアカウントを運営しているお二人をインタビューしました。

笑顔が素敵なお二人

どういった経緯で活動を始めたのですか?

わかさん:3月下旬に、津田塾大学も新型コロナウイルスの影響でオンライン授業になることがわかりました。昨年までは春にサークル紹介があり、そこで先輩方が新入生の履修相談にのっていました。しかし今年はそのような機会はありません。新入生の頃、自分達も履修登録が大変だったことを思い出しました。そこで「自分たちに何かできないか」と思いInstagramのストーリーに投稿したんです。そうしたらやほさんが反応してくれたので「じゃあやろう」と。私は何かやりたいという気持ちはあっても一歩踏み出せないタイプで。でもやほさんはやろうと思ったらすぐ実行できる性格で、背中を押される形で始めました。やほさんとは1年生のころ同じサークルに所属していて、そこで仲良くなりました。たまにあったら「よっ」と挨拶をするような感じです。

やほさん:私も自分が所属しているサークルで新歓の話を聞き、大変そうだなと感じていました。わかさんはけっこう問題意識が高い人だなと思います。オンライン授業になったことで生じる問題をしっかり指摘しているところが「あぁ面白いな」と。その問題について考えてみようと思い、このような形になりました。4月になると、Twitterでも新入生の投稿を見かけるようになるので、そのタイミングでアカウントを作成しました。

どのような質問が寄せられていますか?また、質問に対してどう感じていますか?

わかさん:他学年からもたまに質問はありますが、ほとんどが新入生からと思われる大学に関する質問です。人生相談に近いようなものなどは私が答えてしまってもよいのかなと感じることもあります。回答に時間がかかってしまうこともありますが、ほとんどの質問には素早く答えるようにしています。みんな思い悩んでいるんだなとわかる内容のものが多いです。

やほさん:質問箱に来るものは全てわかさんに任せています。最初の頃はDMにも履修に関する相談やサークルに関する相談が来ていました。今は質問箱に集中していますね。考える時間が多い分、普段よりも深く考えているんだろうなと感じます。

わかさん:特に周りの様子がわからないことが怖いのではないでしょうか。例えば自分の成績が悪いと感じても、周りも同じような状況だとわかれば、少し心が軽くなると思います。しかしSNS上では成績について「思ったよりもよかった」といった投稿をする人の方が多いのが現実です。上の層の情報しか見えない、逆も然りですが、偏った情報しか見られないということはすごく怖いだろうなと。「自分だけが違う」と思ってしまうのかもしれません。

あとは力の抜きどころがまだわからないのだなと感じます。課題の量が多いと聞きますが、実際には増えていたとしても1.2倍、1.3倍ほどだと思います。期末レポートの提出がある時期に、レポートに関する質問がすごく多くて。私が1年生の頃はここまでしていなかったなと思うような質問もありました。みんなが質問してくれることで、見ている人たちも「みんなちゃんとやっているから」と頑張る。全てに一生懸命取り組み、程よく力を抜くことができないために実際よりも多く感じてしまうのではないかなと思います。皆底上げされているので今の1年生は凄い卒論を書くだろうなと勝手に思っています。

SNS上にある「嘆き」を積極的に拾いたいと考えているお二人

質問に答える際に心がけていることはありますか?

わかさん:強制はしないようにしています。絶対にした方がよいこと、例えば教務課に連絡してくださいとか、先生に質問してくださいとかは伝えていますが。こうしなさい、などあまり自分の意見を押し付けすぎないようにはしています。質問に答える際には、個人の主観が入ってきてしまいます。全てを私の主観で染めるわけにはいかないので、一つのアイデアとして提示できればな、という意識でやっていますね。

前向きにオンライン授業を受けるにはどうしたらよいと思いますか?

わかさん:1年生は必修が多いので難しいかもしれませんが、好きな科目や自分が興味をもてそうな科目を、シラバスや先生の情報をじっくり見て選ぶことが大切だと思います。内容に興味をもてないとオンライン授業では尚更辛く感じてしまうので。

やほさん:確かに内容に興味をもてないとオンライン授業は厳しい部分があるかもしれません。積極的に選んだ訳ではない授業でも、最初から好き嫌いで分けない方がよいです。授業の中で興味をもった言葉をパソコンで調べてみるなど、能動的に授業を受ける意識があると面白くなると思います。上級生でも難しいことですけどね。

今の新入生に対して、アドバイスはありますか?

やほさん:第3ターム、第4タームの間には休みがないため、マラソンのつもりでやった方が良いと思います。夏休みが終わって「よし、第3ターム頑張ろう!」といきなりアクセルを踏んでしまうと第4ターム前に疲れてきてしまいます。自分なりに息抜きをしつつ、と言いたいところですが、どう息抜きするかがまた難しいですよね。

わかさん:やほさんの話を聞いて、やはり息抜きの仕方を覚えることが一番大切だと感じます。何か楽しいと思えることが一つでもあれば、息抜きになると思います。それが勉強の人もいるかもしれないし。サークル活動やアルバイトに取り組んでいる人、家族との生活を大切にしている人もいるでしょう。何かそこに楽しいことがあればきっと乗り越えられると思います。

やほさん:100%全力で、完璧主義に近い人が津田塾には比較的多いと思います。全ての授業を全力で取り組もうと。確かにその姿勢は大切です。しかし本当に疲れてしまったときは無理をせず、休憩を取って後に録画を確認するなど自分を甘やかす方法も覚えていくべきだと思います。2年生以降の方が大変な学科もあるので、そこに向けて自分なりに考えられるとよいですね。

わかさん:私自身も完璧主義に近いところがありますが、やほさんの言っていることは本当に大事です。どこかで息抜きをしないと倒れてしまう、全てが犠牲になってしまうこともあると思うので。自分が疲れていることを「私は疲れているんだ」と正しく認識できるように自分センサーみたいな感じで測れると良いと思います。

今後の活動について、何か考えていることはありますか?

やほさん:質問に答えることは続けつつ、イベントをやってみようかと話しています。新入生が自分達から居場所をつくっていくことができるような企画もやろうかと構想を練っているところです。対面授業のときは同じ授業が多い人などと自然に会話ができました。しかしオンライン授業だと、授業が切れた瞬間から話せる環境がなくなってしまいますので。新入生同士で交流できるような場をつくろうと思っています。

わかさん:対面授業の頃は同じ授業を履修している友人と遊びに行っていましたが、今は積極的に遊びに行く訳にもいきません。そうなるとLINEの通話やZOOMで話そうということになると思いますが、とてもハードルが高いと感じています。遊びに行くときは、行きたい場所を話し合って出掛けることができます。しかしただお喋りしようとなると、難しいなと。対話の機会が減ってしまうと仲良くなる機会も減ってしまうので「何かできればいいな、交流の場をつくれたらいいな」と思っています。

やほさん:「このバッグ可愛いね」から会話が始まることも本来ならばあるので。

取材後に開催されたオンラインイベント第一弾

最後に、新入生へ一言お願いします。

やほさん:あまり悲観的に捉えすぎず、できる範囲のことをやるようにしたらいいのではないかな、と私に対しても周りの人に対しても言いたいです。対面授業からオンライン授業になり、価値観が変わっていく中で、以前の考え方にとらわれすぎるとしんどくなってしまいます。これからの時代、どういう価値観で過ごしたら楽しいのかなと想像を巡らすとよいのではないでしょうか。対面授業の頃は、大学のコミュニティに頑張って入ろうと思っていました。しかしオンライン授業になり、大学以外のコミュニティにも同じくらいのハードルで入っていけるようになりました。そういう意味では選択肢が増えてよかったと捉えることもできると感じています。

わかさん:この時期を乗り越えたら強くなると思いますし、すでに強くなっていると思います。私は上級生の中では新入生との関わりをもっている方ですが、今年の新入生はレポートもしっかり書いているし、色々なことを乗り越えているなと感じます。これからもっと強くなると思って、時には息抜きをしながら頑張って欲しいです。よく言われることですが「チャンスはどこにでも転がっているよ」と。色々なイベントがオンライン開催になっているのでよい機会でもあるなと感じます。オンラインの良さを生かして頑張れたら良いと思います。

また「嘆き」を見せて欲しいなと思っています。こんなことに困っている、こんなことがしたいけれど自分達では難しい、など。見せてくれれば、私たちができることは何でもするので。気軽に相談してください。


 Twitter:【非公式】津田塾大辞典📚 @tsudapedia

(イラスト担当:総合政策学部 総合政策学科 3年 橋岡 侑子さん)