津田塾探訪
津田塾探訪 #22 津田ホールのグランドピアノ
千駄ヶ谷キャンパス内にあり、2018年11月末に取り壊しが完了した津田ホール。当初は津田スクール・オブ・ビジネスの講堂として建築されましたが、その音響の良さから音楽ホールとしても多くの著名音楽家の舞台として使用されました。
津田ホールには2台のグランドピアノがありましたが、現在はそれぞれが国立音楽大学(東京都立川市)と桐朋学園大学(東京都調布市)に貸し出され、音楽家の育成に活用されています。
今回の津田塾探訪は、2台のピアノが2校に貸し出されることとなった経緯に迫ります。
多くの音楽家から愛された津田ホール
津田ホールは、世界的建築家で千駄ヶ谷キャンパスのアリス館の設計も担当された槙文彦氏により設計され、1988年に開場しました。その音響と環境の良さで、2000年には日本音響家協会による「優良ホール100選」に選出されています。また、毎日新聞社が主催する全日本学生音楽コンクールの東京大会も開催され、プロを目指す音楽家の「甲子園」として親しまれ、愛されていました。
2台のピアノの行方
2台は「最上のピアノ」と言われている、スタインウェイグランドピアノ。はじめは大切にしてくれる人の元にあればと、売却する話も持ち上がりましたが、「同窓会ゆかりの財団法人である津田塾会が寄贈してくださり、たくさんの音楽家に奏でられてきたピアノは、今後も若いピアニストの育成に使って欲しい。また、いつの日か場所ができれば引き取りたい」という髙橋裕子学長の意向もあり、貸し出されることになりました。
1台は、津田塾大学も加盟する大学協力機構「多摩アカデミックコンソーシアム(TAC)」に加盟している国立音楽大学に貸し出すことが決まりました。
もう1台は、鍵盤に象牙を使用している大変貴重なもので、管理が非常に難しく、なかなか引き取り手が見つかりませんでした。そんな中、総合政策学部の大島美穂先生の知人のつながりで、桐朋学園大学の学部長が引き取りたいと申し出てくださいました。ピアノを津田ホールから搬出しなければならない期限の一週間前のことでした。
桐朋学園大学では「学生が音楽家になるためには、質の高い楽器でよい演奏をする経験が必要」ということで、専門家によるコンサートはもちろん、学生による小コンサートや大学入試の実技試験にもこのピアノを使用しているそうです。
生き続ける津田塾会の思い
ホールは閉館し、その跡地は大学が利用する広場となりましたが、2台のピアノは舞台を変えて現在も使用されています。同窓生たち、そして津田ホールに携わっていたスタッフたちの思いは引き継がれ、今も音楽を奏で続けています。